チーム完成度で1つ上回った大東文化大
試合終了のブザーが鳴ったとき、得点ボードの表示は大東文化大70-53東海大。準々決勝第1試合の結果は大東文化大の完勝と言えるものだった。「東海大はセットオフェンスが多いので、最初からフロントコートに入る時間を遅らせようと考えていました」と、司令塔の熊谷航が語るように、大東文化大は第1Qから前から当たる激しいディフェンスを展開。対応に遅れた東海大のミスを逃さず流れを呼び込んだ。
38-29で前半を折り返し、第4Qにはリードを二桁に広げる。東海大も奮起して6点差まで詰め寄るが、大東文化大はここでギアを1段階アップ。
「これまでのうちだったら、東海や筑波と対戦するときはやる前から『強い相手』という先入観があって、リードしていても追い上げられると変にあわててしまうところがありました。けれど、去年のインカレを制したことでそういう先入観が薄れたような気がします。強いには違いないが敵わない相手ではないという自信を持つことができた。その自信が今日の踏ん張りどころで生かされたように思います」(西尾吉弘監督)
西尾監督の言葉を裏付けるように熊谷は「東海大に臆する気持ちは全然なかったです。むしろ全員が『やってやろう』というポジティブな気持ちで臨みました」と言い切る。また、この試合からスタメンを任されたビリシベ実会(4年・190cm)も「今日は最初からもうガンガン行くと決めていました。相手が東海だからといってビビることはなかったです」と、笑顔を見せた。ビリシベは今年右足の脛を骨折し2月にボルトを入れる手術をした。復帰したのは4月。コートを離れていたことで「ゲーム勘が鈍っていないかという不安はあった」と言うが、この日は24分26秒コートに立ち、11得点、7リバウンド、東海大のお株を奪う激しいディフェンスからスティール2もマークして勝利に貢献した。
「去年のインカレ優勝はすごくうれしかったし自信にもなりましたが、今年の新チームが始まるとき、日本一にはなったけど自分たちはまだまだ強いわけじゃないという話をみんなでしました。去年は去年、今年は今年と切り替えてまた日本一を目指そうと」。それはビリシベだけではなく、これまで熊谷とモッチ・ラミン(3年・202cm)という柱に頼りがちだったチームを自分たちの力で押し上げたいという選手全員の思いでもある。
「今年のチームで言えば、3年の後藤(大輝)や町田(篤紀)、2年の飴谷(由毅)の成長にも期待しています。というか本当に頑張ってもらわなければ困る」と言う西尾監督にとって、この東海大戦では飴谷がスタメン出場し、途中から出た後藤が3本のスリーポイントで流れを作ったことも明るい材料だったのではないか。もちろん、目指すのは優勝。東海大に17点差を付けた勝利も「会心の出来とは言えません。反省すべきところはきちんと反省して次戦に向かいたいと思います」という熊谷の言葉が頼もしく響いた。
敗れたとはいえ秋へののびしろは大きい東海大
一方、思わぬ大差で敗れた東海大の陸川章監督は敗因として「大東文化大が仕掛けたディフェンス」を挙げた。
「チェンジングのゾーンプレス、1-2-1からのトラップディフェンスにあたふたしてしまいました。うちもゾーンプレス対するボール運びの練習はやってきたつもりですが、それを瞬時にピタピタっと対応できないところがまだまだです。この敗戦をうちの現状、今の力なのだと真摯に受け止め、またここから秋を目指します」
後半には東海大らしい速攻も繰り出したが、大東文化大の鮮やかな3ポイントに流れを断ち切られた。ポイントガードとしてチームを牽引し、ゲームハイの22得点を稼いだ寺嶋良(3年)は「出だしが悪く、リードされた展開で最後まで行ってしまったのが敗因だと思います。途中6点差まで詰め寄ったとき、さらに集中力を高めて同点、あるいは逆転に持っていければ流れは違っていただろうし、競っても勝てるチャンスはあったはずです」と、振り返った。
「ただ、そのあと一歩が及ばなかったことがうちの弱さ。同じポイントガードとしても大東文化の熊谷さんにはまだまだ及びませんが、自分は勝手にライバルだと思っているので、その熊谷さんに負けないよう自分もチームも今回見つかった課題を克服できるよう頑張っていきたいです」
今年の東海大には多くの有望選手が入部した。その1人である大倉颯太はこのトーナメントでデビュー。(大東文化大戦では15分44秒出場。7得点、3リバウンド、1アシスト)北陸学院高校時代から強気なプレーには定評があったが、「大学デビューとかそういうことは考えてなくて、コートに出る以上は1年生とか関係なく、チームの力になりたいと思っていました」と、語る。敗れた大東文化戦については「ゲームにはいい流れと悪い流れはありますが、自分が出て流れを悪くしてしまうことがありました。それは大きな反省点です」としながらも「相手がやってくることがわかっているのに対応できなかったことが悔しい。こういう負け方は本当に悔しいので次は絶対に同じ負け方はしたくないです」と、負けん気の強さをのぞかせた。
その大倉について陸川監督は「彼の良さはプレーの勘の良さと冷静なところ。ディフェンスのローテーションミスでリバウンドを取られてしまった場面もありましたが、注意すればすぐに理解することができます。(優れた)オフェンス力は誰もが知っていますが、これからディフェンスで他を助けることを学んだらさらに飛躍できると思っています」と、期待を寄せる。先輩の寺嶋もまた「颯太もそうですが、他の1年生たちも単に有力選手というだけでなく、みんな努力家。僕たち上級生は彼らが成長できる環境を作って一緒に成長していきたい。そういう意味で今年の東海ののびしろは大きいと思っています」と、きっぱり。敗戦のあとの顔に初めて笑みが浮かんだ。
第1試合 #大東文化 vs. #東海
素晴らしいカバー!お見事!#関東大学バスケットボール選手権
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文・松原貴実 写真・吉田宗彦