関東大学3部リーグは上武大学が16戦全勝優勝を決め、幕を閉じた。9位(5勝11敗)に終わった文教大学だが、左利きのエース遠藤卓選手(文教大学)は528点(平均33点)を挙げ、昨年の4部に続き得点王となった。国学院大学との最終戦では50点を叩き出した屈指のスコアラーである。だが、そのプレーは決してセルフィッシュではない。小さなチームであるがゆえに得点を獲る役割を任され、仲間たちと一丸になって一つひとつのゴールを生み出していた。自らもジャブステップを駆使し、ほんの少しのスペースができれば思いきり良くジャンプシュートを放ち、高確率で決めていった打開力も兼ね備えている。
名門・山形南高校出身の遠藤選手。高校最後のウインターカップ1回戦で、馬場雄大選手(アルバルク東京)の富山第一高校に81-55で快勝。3回戦まで進みベスト16入りを果たしている。山形南高校には現在広島ドラゴンフライズで活躍する村上駿斗選手、中央大学の阿部龍星選手、そして後輩には男子U17日本代表のキャプテンとして世界を知る前田悟選手(青山学院大学3年)とタレントは豊富だった。それゆえに、インタビューでは『脇役』と当時を振り返っている。だが、全国3位となった京北高校戦に敗れた試合ではゲームハイとなる26点を挙げ、得点力の高さは当時から光るものがあった。幸い、4年生の遠藤選手の進路はまだ白紙状態だと言う。ぜひ、B.LEAGUEでもその活躍を見てみたいと勝手に期待してしまう。
チームメイトの協力とチーム戦略があっての得点王
ーー 昨年は4部の得点王であり、必然的にマークが厳しい中でも決めきることができた要因は?
昨年から厳しいマークをされることは、自分もチームメイトも分かっています。宮本(将弥)や湯澤(力)は自分でも得点を獲りたいはずにも関わらず、スクリーンをかけてくれたり、パスを出してくれます。チーム全体として自分のマークが厳しくなる中でも、いかに得点を獲るかをこの2年間は課題として取り組んできました。その集大成をこのリーグ戦で出すことができ、厳しいマークの中でも得点が獲れたのだと思います。
ーー オフェンスでは得点だけではなく遠藤選手自身もピックをかけに行ったり、良いパスも出していました。翻ってディフェンスに対する意識は?
宮本、中野(浩輔)、湯澤はディフェンスが得意で、相手のエースを彼らが守ってくれます。留学生に対しては自分がマッチアップしましたが、それ以外のインサイドは真本(寛太)や重田(将)が身体を張って守ってくれています。どちらかと言えばディフェンスでは休みをもらっています。けっしてディフェンスをサボっているわけではなく、それもひとつのチームとしての組織ディフェンスです。昨年、先輩たちがいたときも同じでした。ディフェンスで体力を使わないようにしてくれることで、得点が伸びている要因でもあります。ディフェンスの意識が低いわけではなく、チームの戦略としてカバーに徹するディフェンスになっています。
ーー 40分間フル出場し、1分1点以上の得点を獲ること自体が大変なわけでその戦略は納得です。
チームメイトの協力があり、チームとしての戦い方を徹底したことでの得点王です。僕だけの力ではありません。
ーー 山形南高校時代は得点に関してはどう考えていましたか?
他のメンバーにはすでにプロとなった村上、中央大の阿部、青学大の前田と本当に日本のトップ選手たちがチームメイトにいたので僕は脇役でした。そのメンバーにマークが寄る分、自分のところが甘くなりその隙を突いていったり、リバウンドや走ることが当時の役割でした。一人で何十点も獲るようなことは考えてなかったです。
ーー このチームだからこそスコアラーが役割になっただけであり、周りに得点を獲れる選手やビッグマンがいれば自ずと違うバスケットになり、その柔軟性もあるように感じます。B.LEAGUEへの道は考えていますか?
実力的に今までは考えたことはありませんでした。でも今は、チャンスがあれば挑戦したいですが……まだ分からないです。
知っている選手たちのB.LEAGUEでの活躍は、すごく刺激になっている
ーー 3部だからこそ177cmでもポストアップやフィジカルで通用してしまう部分もあったと思います。さらに上を目指すとなるとポジションアップも必要になってくると思われますがその自信のほどは?
ガードが多いというチーム事情があり、自分が外に出てしまうとインサイドからの得点がなくなってしまいます。その解決手段のひとつとしてポストアップしており、それは高校時代からやっています。得意なのは動きの中でのシュートであり、2番〜4番までは対応できるとは思います。
ーー すでにB.LEAGUEで活躍する同級生・村上選手の存在とは?
村上とはよく連絡を取っています。バスケットに対する意識はもちろん高く、食事など私生活の面からプロフェッショナルを追求しています。自分は生活費も限られる学生なので同じ水準のことはできないですが、日常生活やプロバスケット選手としての考え方は本当に刺激される部分があり、彼に負けないようにと思ってがんばってきました。(アースフレンズ)東京Zには先輩の柏倉哲平さんもいます。知っている選手たちのB.LEAGUEでの活躍は、すごく刺激になっています。
ーー その活躍を見ていることで、自分でもできると思える部分もあるのでは?
それはあまり考えたことがなかったですが、自分の気持ちだけではどうしようもならないですし、相手から求められなければ成立もしませんので、あまりこだわらずに将来のことは考えていきたいです。でも、チャンスがあれば、挑戦したい思いはあります。
ーー ラストシーズンを戦った3部のレベルとは?
留学生も多く、日本人選手も高さがあって体も強い選手が多くおり、どちらかと言えば通用しないことの方が多く、苦しい試合ばかりでした。それに対応するための動きやシュートの打ち方などを工夫してきたことによって、かなり得点を獲れるようにもなりました。高校時代は脇役だった自分が、チームの中心になれたこと自体が大学4年間で成長できたことです。それも自分一人の力ではなく、先輩方の代から自分にシュートを打たせてくれるシステムを作ってくれたおかげなので、チームには本当に感謝しています。得点力に関しては成長できた4年間でした。最後の(4部4位との)順位決定戦(11月7〜8日のいずれか)もしっかり勝って、良い形で大学バスケを終われるようにしたいです。
ーー チームの半分以上を挙げていた得点源を失ってしまう来年へ向けて、後輩たちへのメッセージを!
今年も相当厳しかったですが、来年はもっともっと厳しい戦いになります。でも、何も通用しなかったわけではないですし、2年生の真本や重田がすごくがんばるようになったリバウンドは良くなっています。バスケットに対する熱がすごくある後輩たちなので、それを良い方向に持っていけるようにしてください。3部のプレッシャーを意識し、そこを追求して練習からよりゲームライクに取り組んでいけば、戦える部分も少なからずあります。3部で戦っていて思ったことは、やっぱりディフェンスとリバウンドの強いチームが土壇場でも強く、そういうチームが上位にいます。来年、得点力は落ちますがそれは分かっていることです。ディフェンスとリバウンドを徹底し、泥臭いプレーで3部でも戦えるチームを作っていってください。
シーホース三河のキャプテン狩俣昌也選手(国際武道大学)や京都ハンナリーズの綿貫瞬選手(神奈川大学)など関東大学3部リーグを経て、現在はトップリーグであるB1で活躍する選手も少なからずいる。B3には、明星大学のエース丹野合気選手が大学に籍を置きながら東京エクセレンスに引き上げられ、プロ契約を果たしている。その丹野選手はこれまで8試合全てにおいて先発で起用され、10月21日(土)の大塚商会アルファーズ戦では24点を挙げる活躍だ。
B1からB3まで全45クラブあるB.LEAGUE。インカレに出てくるような全国区のチームから良い選手をすくい上げるだけでは足りない状況でもある。3部という環境だからこそ、スペシャリストが生まれやすい。逆に考えれば各クラブの弱点を補う選手を見つけやすいリーグとも言える。B.LEAGUEだけではない。オリンピック種目に決まった3×3という道もある。プロとして活動する3×3 PREMIER.EXEのサラリーも充実し始めていると耳にする。バスケットを続けられる環境は、少しずつ良い方向に向かっているようだ。
文・写真 泉 誠一