昨シーズン、1勝17敗で2部最下位(10位)となった法政大学。入替戦では神奈川大学に敗れ、残念ながら3部へと降格した。だが、そのメンバーを見れば、在学中から門戸が開かれたBリーグ特別指定選手が2人もいる。中村太地選手は常勝軍団・シーホース三河の一員としてトップレベルを経験してきた。そして、大学進学までの期間、地元の福島ファイヤーボンズでその実力を示した水野幹太選手が今春より法政大学の一員として迎え入れられた。今年のキャプテンである植村哲也選手は明成高校出身。その後にウインターカップ3連覇を果たすことになった黄金時代の幕を開けた立役者の一人である。
もっと丁寧に、もっとひたむきに
「第66回関東大学バスケットボール選手権大会(以下トーナメント)」準々決勝では、チャンピオンチームの筑波大学と対戦。植村選手が高校3年時のウインターカップ決勝で破った福岡大学大濠高校出身の青木保憲選手が筑波大学の新キャプテンを務める。4年前は92-78で圧勝した高校時代だったが、大学になると立場が入れ替わった。
「身長も、スピードもあるというのは前々から分かっていたことですが、一つひとつのプレーを丁寧にやっている印象がありました。スクリーンひとつにしてもしっかりぶつかってきますし、そういうところに差を感じました」
190cmの中村選手がビッグガードとして頭角を現しており、それほど体格的に見劣りする感じはなかった。序盤からディフェンスでプレッシャーをかけ、集中して試合に入ったことでリードを奪った法政大学が会場をざわつかせる。しかし筑波大学は、リバウンドを獲ってからトランジションの速い展開を繰り出すと一気に点差を離していく。終わってみれば54-82、実力の差を見せつけられた。
「昨年の優勝校である筑波大学があそこまで必死にルーズボールやリバウンドを獲りに来る。1位のチームがそこまでやってるのだから、僕らはもっとひたむきにやっていかなければならないと痛感しました。そこは日頃の練習から詰めていくべきところです」
日本一の筑波大学と対峙したことで、足りない部分が明確になった。
目標は「2部昇格!それだけです」
一昨年前の2015年に2部へ降格し、転がるように翌年は3部に落ちた。タレントは揃っている法政大学だからこそ、ぶっちぎって2部昇格することが至上命題でもある。だが、3部のレベルに合わせてしまって抜け出せなくなることが不安材料であり、よくある話だ。
「まずはこのトーナメントがそのままリーグ戦につながる大会だと思って戦っています。3部リーグで相手のペースに合わせてしまうというのは、この法政ではすごく考えられることです。相手がどこであろうと、もっと自分たちのバスケットを確立していかなければなりません。今年は走るバスケットをテーマにしているので、そこを練習から見失わずにやっていきたいです」
過去2年間は育成を掲げていた塚本清彦・前ヘッドコーチと、勝利を求める選手との間に溝ができ、バスケットを楽しめずにいた。しかし、新体制となった今年は違う。筑波大学に完敗した後にも関わらず、「楽しいシーズンになりそうです」と目を輝かせていた。
「素材としてはすごく良い選手が揃っていると思います。ビッグマンもいますし、ガードも豊富です。その中で、もっとチームとして噛み合っていくことが大事になります。一人ひとりの個性を周りが尊重し、しっかりと引き出していくことを各々ができれば、すごく力を発揮できると思っています。あとはコミュニケーションがもっと増えていくことで、それは解消されると思っています」
自信を持って臨む今シーズンの目標はもちろん「2部昇格!それだけです」と力強い。
関東大学トーナメントは15位に終わった。同じ3部のチームも躍進を見せており明星大学が16位、東京成徳大学が14位。入替戦で2部昇格をアシストする形となった神奈川大学は10位と健闘している。3部とはいえ厳しいリーグ戦になりそうであり、そこを勝ち抜いていくことがチームと選手を強くする。
そのリーグ戦の前には、6月5日から新人戦(予選は5月27日よりスタート)が行われる。冒頭で紹介したとおり、学生Bリーガーとしてプロのコートに立った中村選手と水野選手の活躍が注目である。植村キャプテンは、「新人戦で1・2年生はさらに力を付けてチームに合流してもらいたい」と期待を寄せていた。
文・写真 泉 誠一