1回戦の伊丹スーパーフェニックスは75-64、準決勝はワールドバスケットボールクラブに54-45と重たい試合展開だった宮城MAX。それゆえに、若い埼玉ライオンズが勢いに乗って時代を変える可能性もあった。しかし、決勝での絶対王者は圧巻だった。埼玉ライオンズの長所を全て消す試合巧者な宮城MAXが、71-35とダブルスコアで快勝。11連覇と記録を伸ばした。
宮城MAXのエース#4藤本怜央(4.5)は決勝までの2試合で、3Pシュートが1本も決まっていない。伊丹スーパーフェニックス戦は6本打ったが全てゴールに嫌われ、ワールドバスケットボールクラブ戦では1本しか放っていない。「僕の中であとひとつ、何かが足りないと言えば3Pシュートだった」。埼玉ライオンズとの決勝戦、先制点を挙げた藤本は、続く2本目に放った3Pシュートがようやくネットを揺らす。「今日は調子が良い。何よりも気が楽になりました」と波に乗った。
宮城MAXの先発メンバーはいずれも35歳以上である。「ベテランが多い中、周りはすごく速いバスケットを繰り広げていて、それに対する不安ではないが、迷いはずっとありました」と#30藤井郁美(4.0)の頭を悩ます。日本一の速さを自負するパラ神奈川スポーツクラブを、スピードで上回って決勝に勝ち進んできた埼玉ライオンズもまた、速いバスケットを繰り広げてくる。しかし決勝戦は、その迷いを払拭するように宮城MAXが堅い守りから、逆に速い展開で次々と得点を積み重ねていく。「ベテランの意地ですかね」と藤井郁美は笑った。勝因として、「10連覇してきたプライドと修正力」を挙げる。
「チーム内でいっぱい話をしながら1試合1試合修正してきたことで、決勝で一番良い形を出せたと思います。コート上でも相手がアジャストしてくれば、すぐにコミュニケーションを取って対応することができていました。その辺がベテランの巧さかな。スピードだけではなくプレーの精度など、そういうところで勝てたと思います」
年号が令和に変わって初の天皇杯だったが、平成から続く宮城MAXの優勝は変わらなかった。藤本は「平成を勝ち続けてきたので、令和に変わっても自分たちの時代を変えたくはなかった」という目標を達成し、安堵の表情を見せた。