僕自身、そもそも環境に恵まれなかったし、全国大会に出るような選手でもない。最初にはじめたのも小学校4年のとき、校庭のバスケゴールでした。環境に恵まれない人たちがどこでバスケをするかと言えば、やっぱり街にあるストリートコートです。社会人になってもバスケが好きで今も続けており、そのかけがえない場所がこのバスケコートです。
昨年、東京オリンピックで3×3が正式種目になりましたが、4年前に3×3日本代表選手になった経緯があります。そんなチャンスが来るとは思ってもいませんでしたが、バスケが好きで諦めずに続けられているのもこのコートのおかげです。学校にバスケ部がなかったり、続けられなかった子どもたちがここに来て、僕ら大人と一緒にバスケをしています。普段の学校生活では大人は教える立場であり、子どもは教わる立場ですが、このコートではどちらも本気でぶつかり、そんな経験はなかなかできないです。ましてや外国人と一緒にできるなど、日常的に非日常なことが起こる空間です。日本はBリーグができ、プロの部分にしかスポットは浴びないですが、その底辺にあるのがストリートです。そこを伝えていきたいです。
さらに、このコートの良さは、見に来る人も含めてカルチャーとして成り立っています。見ているだけのおじさんが、子どもたちにアドバイスしたり、自然と大人と交流できるような場所はなかなかありません。小さな社会がコート上でいつも起きています。
ピックアップゲームが自然発生する文化を守れ
スタジアムができれば、計画地内のために今ある状態でのコートはなくなってしまうことだろう。しかし、二人の熱い話に対し、ファシリテーターの金山淳吾氏は「ストリートスポーツが身近にあることは大事です。現状あるものを生かし、もっと多様性に広げられないか。皆さんにとってもハッピーなシナリオになるように考えています」とバスケコートを尊重していた。
代表理事の小泉秀樹氏も彼らが築き上げた聖地の成り立ちに感心する。
「せっかくスタジアムを作るのであれば、今持っている多様性ある場所の意味をどう継承するか、さらに新しく発展させられるかを考えていかなければならないです。自分たちの場所にするには自分たちで作りたい思いがあり、物語のような作り方でなければダメだと思いました。特定な事業者が計画を練りすぎずに、みんなが作る余地がなければいけない。多様なスポーツ、多様なファンが集まる良い場所にこの構想がつながるようにしたいです」
ABが代々木公園のバスケコートの素晴らしさをこう表現していた。
「ピックアップゲームの文化は代々木公園以外にはないし、それも外国人たちが先導してくれたからです。キレイなコートができただけではじまるものでもありません。最悪このコートがなくなった場合、その文化が日本から途絶えてしまうのが極論です。それこそが代々木公園のこだわりです」
今後、本当にスタジアムができるかどうかはまだ分からない。ただ、こうして代々木公園のバスケコートの良さを発信してくれたことでここを守るとともに、あらためてここで育まれたバスケ文化を全国に広まって欲しいと願う。公園にあるバスケゴールでシューティングするのも楽しい。でも、ゲームをしてこそバスケであり、ボールひとつで仲良くなれるのが最大の魅力だ。
一般社団法人 渋谷未来デザイン
SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA
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文・写真 泉誠一