一足早く公開された泉誠一氏の記事をご覧の方はご承知だと思うが、今回ゲストチームとして招かれたのは、第1回から3連覇を果たしたFAR EAST BALLERS(以下FEB)。英氏としては、やはりこの初代王者が節目の年を飾るに相応しいと考えていたようだ。4on4の試合形式にもかかわらず集まったのは4人だけで、全員が40歳以上。笑顔が多く、かつてのようなギラついた表情を終始貫き通していたわけではなかったが、相変わらずユニフォームを前後逆に着て現れたATSUSHIを筆頭に、いざ試合が始まるとスイッチが入った印象があり、往年のFEBらしさは存分に感じられた。対戦相手がTEAM-Sだったことも、彼らにスイッチを入れた要因の一つだったのは容易に想像できる。
「去年からDJ MIKOに『20周年だからぜひ出てよ』という話をしてたんです。MIKOも結構乗り気で『メンバーに聞いてみます』と言ってくれて。本当はCHRISも来る予定だったんですが、夕方から仕事があるということでダメになっちゃった。でも、ああやって出てきてくれるのはストリートだなって感じましたね。しかも、TEAM-Sとの対戦でね。できれば準決勝か決勝でこの対戦を見たかったですが、Sに勝ったのもすごい。Sも長くやってるとはいえ、若い選手もいるのでSかなと思ってたのにしっかり勝つところがカッコいい。準決勝のCappello戦も惜しかったし、あと1人いれば(笑)」
社会人日本一の実力を見せたCappelloも、女子の部を制したCASPERも、チャンピオンに相応しい試合を披露した。白熱した試合が多かった中、英氏は優勝チームと同等にTEAMきまぐれを称えた。彼らにストリートの魂を感じたからだ。
「一時、選手たちがみんな仲良くなってきちゃって、ストリートの熱というか、闘志メラメラみたいな感じがなくて『う~ん』と思ってたところもあったんですが、彼らは東京予選でHDCに負けたのが悔しいと言って関西予選にエントリーしてきたんですよ。そこで優勝して、チャンピオンシップでまたHDCと対戦した。昔はみんなどこにでも行ってたんですよね。今回またそういうチームが出てきたというのはすごく嬉しかったし、それが増えてくるとこのシーンもより成長していくと思いますね。彼らのようなチームが輝ける場を作っていけたらと思います」
勉族、FEB、TEAM-Sといったチームとともにシーンを形成してきたHITH。20年も経てばシーン全体が変化の波に飲まれるのは必然のことだが、英氏は時の流れを感じながらも「狙いはドリフというわけじゃないですが(笑)、ここに来ると毎回同じだけど面白いよねっていうようなイメージは常に持ってます」と、ストリート界のビッグゲームとして変わらない良さを持ち続けようとしている。「いくつかのチームは高齢化が進んでるんで(笑)、ぬま(勉族)とはこの間『“シニアインザフッド”をやろうか』なんて話もしたんですよ」と、シーンを牽引してきた仲間に敬意を払い、その歴史を後世に伝えていこうという意識ものぞかせるHITHは、これからも日本のストリートボール界で重要な役割を果たしていくに違いない。
文・写真 吉川哲彦