5人制を引退したのは脳震盪に悩まされていたことが要因の一つだったが、現在は「首のトレーニングもしてるし、自分なりに気をつけて、周りを見ながらプレーするようになった」と大きな問題はないようだ。プレーの質や体のキレは高卒で飛び込んだWリーグ時代のほうが良かったという自覚もありつつ、鹿児島在住時は指導者をしていたということもあり、「3X3は監督がいなくて自由だから、判断力とか成長できてる部分は多い。今のほうが、バスケの考え方は良くなった」という感触もある。
そんな自身の成長も含めて、今はプレーすることを純粋に楽しむことができている。この日はGUNMAのホーム誘致開催。オレンジ色のTシャツが観客に配られたということもあり、会場はGUNMAの応援が目立ったが、決勝でそのGUNMAを相手にした遠藤はそれすらも楽しんだ。
「ST KASUMIとGUNMAの試合を見たらすごいホームだって思ったけど、自分がコートに立ってみたら集中できたし、自分たちは強制されてプレーするんじゃなくて自由に楽しんで、ちょっとチョケちゃうくらいのチームだから、アウェーは逆に楽しい環境でした。たくさんの人に見られながらというのは幸せを感じましたね。自分は、環境を変えたことによって自信も、楽しむ気持ちも増えたから、こうやって楽しむ姿をいろんな人に見せるのは合ってるのかなって思います」
遠藤のWリーグでのラストゲームは、2021-22シーズンのオールスターだった。事前に引退を表明していた他の選手がスポットライトを浴びる中、遠藤はひっそりと去ったようにも思われているが、実はコート上で全力のダンスを披露している。生来弾けるような明るさを持っていた遠藤にとっては、UENOHARAの一員となったこともプラスだった。
「忍さんに出会ったときから『何か似てるな』って思ってて、いろんな人にも『忍が2人いる』って言われます(笑)。そういう人と一緒にやれるから、こっちもセーブすることがないし、これはやっちゃダメだなというのがなくて、思いきりできます」
そうして自身を解放できている今は、「やっぱりバスケが好きなんだなって再確認した」とのこと。バスケットとの距離感も、遠藤にとっては今の状況がちょうど良いのだろう。のびのびとプレーするその姿は、プレーオフでもUENOHARAを高みに導くはずだ。
「Wのときは、それが当たり前なんですけど、毎日練習して『バスケは仕事』という感じだったから、引退するときはもうバスケなんてやらない、普通の女子になりたい、結婚してお嫁さんになりたーいみたいな想いが結構強くて、おなかいっぱいだったんですよ。だけど、今は四六時中バスケのことを考えるんじゃなくて、普段の生活をしながらこうやって最高の舞台でできるというのが本当に幸せだし、やっぱり自分はバスケを辞められないんだなあって」
文・写真 吉川哲彦