「やりたくなってはいないです(笑)」
これが、今の齊藤洋介の偽らざる心境だ。やりたくなっていないのは、3×3のプレーのことを指す。3月に3×3日本代表候補として合宿に参加し、4月には3×3.EXE PREMIERが都内で開いた記者会見にも登壇しているが、この時点で選手としての活動には一区切りをつける意向だった。実際に、今シーズンの3×3.EXE PREMIERには今まで通りUTSUNOMIYA BREX.EXEの一員として選手登録されているが、出場は1試合もない。2018年にBリーグから転向して以来、3×3シーンを常に引っ張ってきた齊藤も、今年で40歳。事実上、第一線から退くことになる。
「やったところでもうこれ以上上手くできないなって予想してるんで、それが覆ることはないです。自分がまだまだ若くて伸びしろがあったら他チームの選手に対抗できるかもしれないですけど、伸びしろを探すのも難しいし、どうやってもごまかしでしかない。もうできないことが多すぎて、やったところで良いパフォーマンスは発揮できないんじゃないかなって」
3×3の試合を離れて数カ月。練習やトレーニングは日常から消えた。これまでとは異なる生活に違和感を抱いてもおかしくないが、齊藤は「違和感はないですね。今言われて『あ~確かに……』って思ったくらいなので、全然意識してなかったです」とのこと。というのも、齊藤はストリート時代の仲間などと新たに5人制のクラブチームを結成し、シニアの全国大会を目指して試合を消化しているところなのだ。
「プロフェッショナルではなくなりましたけど、プレーする場所が新しくできたので、そのおかげで物足りなさを感じることがないのかなと思います。今まで選手だったので、自分がプレーする場所がなくなった途端にそういう違和感とか『またやりたい』という想いもきっと芽生えてたと思うんですけど、舞台は違えど今も僕なりに志高くプレーできてはいるので、今までとのズレをそこまで大きく感じてるかというとそうではないです」
実質的なコーチとして引き続きUTSUNOMIYA BREX.EXEに携わっていることも、今の齊藤にとっては日常の変化を感じられない要素の一つかもしれない。チームにとって齊藤の抜けた穴が大きいことは言うまでもなく、これまでに比べると芳しい結果を残しているとは言い難い。ただ、齊藤はそれも織り込み済み。今はチームを再構築する過程にフォーカスしている。
「チームが求めてることをやろうとしてくれる真面目な選手ばかりなので、まだ結果がそこまで出せていないことに関して、彼らを責めることは全くないです。日本代表選手を輩出する、日本一を奪還するといった中長期的な構想の中でまだ3カ月くらいなので、いきなり高みを目指すのではなく、一つひとつのプロセスを消化していって、そこまでの成長段階を自分たちが感じることができていれば、それは現段階での成功だと思ってますし、僕はそこまでネガティブにはとらえてないです。ただ、結果にこだわらなきゃいけないということは絶対だと思うので、残りのシーズンでしっかり巻き返していけるように頑張っていきたいとは思ってます」
これからの3×3の世界を下の世代に託したい齊藤にとって、コーチ業はやりがいのある仕事だ。ただスキルや戦術を仕込むのではなく、選手それぞれが自身の立ち位置を認識し、自己を確立すること、メンタリティーを養うことを手助けしたいというのが齊藤のコーチとしての在り方。輝かしい実績を残してきたチームだからこそ、スキルや戦術以上に内面を重視した指導が必要になる。