人口を考えると不思議なことではないが、埼玉県には意外と3×3のチームが多く、3XS(トライクロス)というリーグの女子カテゴリーに限れば、9チーム中4チームが埼玉県内に拠点を置いている。男子も含めると、特に南部から東部にかけて多くのチームがひしめいている状況。Bリーグ・越谷アルファーズの存在も併せ、バスケットがより盛んになっていく下地は十分にありそうだ。
3XSに参戦する埼玉県内の4チームのうちの1つが、かつてつくば(現・茨城)ロボッツなどでプレーした翁長明弘をオーナーとして、越谷市に隣接する吉川市に今年誕生したESI SQUAD。7月27日には、東京都内で開催されたSpreads Gameにもエントリーし、隣の三郷市で活動するZELKOVA SAITAMAとの対戦は僅差で制したが、3XSでも上位争いに加わっているGIVERSに対しては8得点しか奪えず、KO負けを喫した。
チームは20歳前後の選手や3×3の経験がほとんどない選手が大半を占めるが、キャプテンを担っている小林円香は社会人となってから始め、4~5年の経験がある。ただし、大阪出身の本人曰く「関西に全然チームがない時期で、寄せ集めでやってた程度。しっかりやったのはこの1年ですね」とのこと。その1年はTEAM HUSTLEで各種大会に出場していたが、ESI SQUADのトライアウトに自ら応募し、入団を勝ち取ったということだ。
学生時代は強豪校で過ごしてきたわけではなく、「しっかり勉強しなさい」という親の方針もあり、バスケットに打ち込むことが難しかったという小林。社会人になって以降もバスケットに触れ続けてきた結果、高いレベルを目指す決断に至った。
「大人になってから『もうちょっとちゃんとやりたいな』と思って、肩書的なことでいえばプロになりたいと思ったのが25歳のとき。今から5対5のプロを目指すのは難しいと思ったんですけど、3x3ならなれるかもしれないと思ってもう1回本格的に始めました。今は一応プロという肩書をいただいいてプレーできてるので、ちょっとずつ目標は達成できてるのかなと思います」
国内プロリーグが生まれて既に10年が経つ3×3によって、日本でもバスケットボール選手の選択肢は増えた。その恩恵を最も受けるのが、小林のようないわゆるノンキャリアの選手と言っていいだろう。プレーする環境があることにありがたみを感じている小林は、女子選手のキャリアのあり方に思いを巡らせ、今ある環境で目一杯バスケットに取り組もうとしている。
「女子のバスケットボールのキャリアは、強い高校や大学に行ってないとその先がないし、Wリーグの後もなかったりするので、楽しんでバスケする場がなかなかないなって思ってたんですけど、こういう3×3の大会があると『まだ現役でやってるんだね』って周りから言われる。今3×3のトップでやってる人も30代が結構多いので、選手寿命が伸びてるなと思いますし、プロにならなくてもバスケを楽しんでいいんだなっていうのを小中学生たちにも見せられると思うので、私もできる限りやっていきたいなって思ってます」