男子でALPHAS.EXEという新王者が誕生したのと対照的に、女子は連覇達成。YOKOHAMA G FLOW.EXE(以下G FLOW)は、日本の3×3でトップの地位を確立したと言っていいだろう。3×3.EXE PREMIERが10年目の節目を迎えた今シーズン、レギュラーシーズンでは4つのラウンドのうち1つしか制することができず、1位通過はFLOWLISH GUNMA.EXE(以下FLOWLISH)に譲ったものの、9月17日のプレーオフでは盤石の試合運び。グループラウンドでは海外の2チームをいずれもKOで退け、FLOWLISHとのファイナルも21-10と、これもKOで圧倒してみせた。
但し書きをつけておくと、これにはFLOWLISHが同日開催のRed Bull Half Court World Finalの出場権を勝ち取り、主力がこぞってセルビアに向かったという事情もあった。とはいえ、G FLOWがディフェンディングチャンピオンとして国内トップの牙城を守ったことは事実。G FLOWも、今シーズンの開幕ラウンドはアゼルバイジャンでのFIBA 3×3 Women’s Seriesと被り、そちらを優先した。世界と戦うチャンスがあるチームの難しさが、この2チームに表れている。
昨シーズンはファイナル最終盤で値千金の2ポイントを炸裂させた矢上若菜がファイナルMVPを受賞したが、連覇となった今回は吉武忍がその栄誉に浴した。3×3.EXE PREMIERの女子カテゴリー初年度からプレーし続け、リーグを代表する選手の1人となっている吉武だが、多彩な得点パターンを持つスコアラータイプの矢上と比較すると、必ずしも積極的に得点に絡むほうではない。そのことは吉武自身がよく自覚しているところでもある。
「自分がキーマンだとかエースだとかは全く思ってなくて、誰か他にエースの子がいて、私はそのこぼれたシュートのリバウンドとかルーズボールを頑張るよっていうスタイル。私がやるぞ、任せろっていうタイプではないので、自分中心のチームを作っても上手くいかないと思います。エースが困ったとき、脚が止まったときに自分が生きると思うし、それが今回たまたま結果につながってMVPになれたのかなって思います。今までもずっとそうですけど、自分が軸とか中心になってバスケットをやってるっていう感覚は全くないですね」
プレーの面ではあくまでも脇役に徹している吉武だが、3×3をよく見るファンならご存じの通り、プレー以外の面では完全に3×3界の主役だ。試合前の選手入場、両チームの選手が整列してのフォトセッション、試合に勝って引き揚げる際など、吉武がポージングなどで周囲の笑いを誘うタイミングは枚挙に暇がなく、3×3界隈のSNSやYouTubeなどに登場する吉武を見ていても、その言葉やアクションはいちいち面白い。それは、心からバスケットを楽しんでいるという証拠だ。