二足の草鞋に挑んでいる藤岡は、3×3の選手としてルーキーでありつつ、指導者としてもまだ若手の部類。日本代表を経験したほどの選手であっても簡単にできる仕事ではなく、今はまだ自分なりの方法論を模索している段階だ。むしろそれほどの選手だったからこそ、自分では難なくできたことを理論立てて説明するのが容易ではないのかもしれない。
「めちゃめちゃ難しいです。プレーするほうが楽だなって思いますね(笑)。高校生だし、そんなにレベルの高いチームでもないので、なんでこれができないんだろうっていうことがたくさんあって、それを言葉で教えるのになかなか苦労してる感じです。プレーは感覚の部分でもあるので、それをかみ砕いて教えるのが自分にはまだちょっとできない」
ただ、体が動く分、自ら手本を示すことはできる。その意味では、3×3をプレーすることも指導に生かせる部分は少なからずあるだろう。切り替えのスピードは5人制をプレーする上でも必ず生きると実感している藤岡は、指導にも取り入れていく方針だ。
「県外の強いチームは大会にどんどん出させてるみたいで、千葉県にも大会があるらしいので、どんどんやらせたいと思ってます。3×3は主体性がすごく大事になってくるスポーツ。高校生の場合、やれと言われてやることしかできない子も多いので、自分たちで考えてプレーするというのも身につけられるんじゃないかと思います。インターハイ予選が終わったら、まずは練習でやらせてみようと思います」
藤岡の話を聞いていると、彼女は根っからのアスリートだと思わされる。指導者の道も3×3への挑戦もまだまだ新米だが、その過程を楽しもうというマインドが藤岡にはある。
「5人制だとベテランの域に入っていたので、バスケットに関してはできないことのほうが少なかったんですけど、今はできないこと、わからないことがものすごくたくさんある。できない、わからないという感覚がすごく久々で、それがすごく新鮮です。大変だけど、自分にとっては良いチャレンジなので、失敗して当然くらいの気持ちで前向きに頑張りたいし、それを皆さんにも応援していただきたいなって」
最後に、藤岡と縁の深いこの選手の名前を挙げておきたい。藤岡のTOKYO DIME入団の約1カ月前に、Wリーグ・アイシンでの現役復帰が発表された吉田亜沙美だ。本人から直接の連絡はなかったそうだが、「噂が流れてきて『マジ?』って感じだったんですけど(笑)、でもリュウさんならやりそうだなって」と語るその顔は満面の笑み。後継者として目をかけてくれた先輩が再び最前線に立とうとしている姿は、良いモチベーションでしかない。
「何かを始めるのに年齢は関係ないって言うじゃないですか。リュウさんはどこまでも向上心があって、まさにそれだなって思います。自分も30歳になりますけど、いろんなチャレンジをしているところなので、リュウさんに負けないように頑張りたいです」
昨年10月に公表した “家族性地中海熱” については、「治療も順調に進んでて、コンディションを見ながらうまく付き合っていけています」とのこと。母校での指導者業が最優先のため、今後試合に出場するという保証はないが、きっとまた、あのクロスオーバードリブルを披露してくれるものと思っている。
文・写真 吉川哲彦