敗れても下を向かせずエナジー全開
拓殖大学4年の三上光河やこの日はロスター入りしなかったが日本代表候補であり、専修大学の淺野ケニーと期待の若手もいるIKEBUKURO DROPS.EXE。中村はこれまでの経験を通して、「まずは下を向かないこと。ゲームは生き物なので、ポロポロとシュートを落とす選手もいますが、それも普段の練習が出てしまってるだけ」と諭し、試合中は「お前、3回目やぞっ!」と大きな声で指摘して会場を沸かせる。
試合中はコーチがおらず、10分しかない3×3において大切な「コート内でのコミュニケーションが圧倒的に少ない」ことも課題に挙げた。「調子が良いときは声も出ていますが、しんどいときにはコミュニケーションがなくなる。ゲームの中で『落ち着け』とか簡単なことで良いので、コミュニケーションを取っていかなければならない。その中で自分はもうエナジーしかないんでね(笑)」と話すとおり、骨折から復帰したばかりとは思えないプレーや声で中村らしさを存分に発揮していた。
中村のキャリアを振り返れば、NBL2014-15シーズンのつくばロボッツは開幕まもない段階で運営会社の経営が悪化し、新たに契約をし直さなければならない事態に巻き込まれた。あのときにバスケをあきらめてもおかしくない状況だったが、当時のロボッツに関わっていた選手の名が3×3.EXE PREMIERになぜか多い。浅野崇史(TOKYO VERDY.EXE)、河相智志(FUKUYAMA BATS.EXE)、夏達維(MP3.EXE)、TOKYO DIME.EXEのオーナーは岡田優介(アルティーリ千葉)などが名を連ねており、「あの年代の選手たちが一番濃いです。もうバスケバカですよね」と中村のバスケ愛があふれ出す。
「本当に辞めずに良かったです。若い選手たちにも、こんなバスケバカがおったって(爪痕を残したい)。2年もコートから離れていると知らない選手も多いし、向こうにとっても『誰だ?』と思われていると思います」
まだまだユニフォームを着て、コート上から伝えられることも多い。チームメイトや対戦相手だけではなく、この日は「娘のミニバスチームの親子が60人くらい応援に来てくれました。戦う姿を見たことで、何か良いきっかけになるんじゃないかなぁ」と、バスケバカを増やすための普及活動は終わりがない。
文・写真 泉誠一