日本一を決めるにふさわしい、劇的な幕切れだった。2月19日に行われた、第8回3×3日本選手権ファイナル。19-19のタイスコアから2ポイントを決めてUTSUNOMIYA BREXが連覇を果たした男子決勝も激闘だったが、先んじて行われた女子決勝はそれ以上の興奮を巻き起こした。
XDとTEAM HUSTLEが激突した女子決勝は、齊藤桃子が2ポイントとドライブで得点を重ねるXDに対し、TEAM HUSTLEも浅羽麻子のシュート力と大橋実奈の力強さを前面に出し、両者譲らぬ熱戦。中盤からTEAM HUSTLEがリードを保つ展開となり、XDは藤井美紀の得点で追いすがるものの、TEAM HUSTLEは残り2分45秒に浅羽の2ポイントで得点を20点に乗せ、KO勝利まであと1点とした。この時点でまだ16点のXDが絶体絶命の状況に追い込まれたことは、誰の目にも明らかだった。
しかしXDは、累積していなかったファウルを上手く使って失点を防ぎながら、ドライブで1点ずつ返していき、残り1分30秒で19点目。そしてその16秒後に齊藤の2ポイントが炸裂し、大逆転KO勝利をもぎ取ってみせた。XDが2年ぶり2度目の優勝を果たし、MVPの栄誉も2年前と同様に齊藤の頭上に輝いた。
選手としての齊藤の凄さは、集中力にある。最後の2ポイントがリングに吸い込まれ、優勝が決まった瞬間の感情を問うと、齊藤からは「そのときの気持ちは正直わからないんです」という答えが返ってきた。
「試合をしてるときは集中しちゃってて、何かを意識しながらというよりも目の前のことを一生懸命やってるだけなので、シュートが入って『うわっ、勝った!』っていう、ただそれだけでした」
あと1点取られると負けが決まるという状況でも、齊藤は自らの仕事を全うすること、チームのためにやるべきことに全神経を注いでいた。先のことを考えすぎず、結果を恐れずに思いきりよくプレーする姿勢を最後まで貫徹。19点目に到達した後も、それは変わらなかった。
「あそこまで1点で積んでいって、あと2点になったらみんな外のシュートは打てる。次も1点だったらその後は決められてしまうと思ったので、誰かがノーマークになったら2ポイントを打たなきゃと、ただそれだけで打ちました。昨日の1試合目が本当に緊張してボールが手につかなかったんですけど、そこからみんなと楽しくバスケットができていくうちに体が温まって、今日は感覚が全然違いました。打った瞬間は『真っすぐ飛んだ』と思って見てただけで、『これは入る』とかは全然思わなかったです。打たないとっていう気持ちだけで打ったので、入った瞬間はビックリしたし、嬉しかったです」
齊藤の集中力の高さをくっきりと浮かび上がらせるのが、タフショットの多さ。齊藤はディフェンスのマークが厳しくなればなるほど決定力が上がる印象があり、ファウルを受けながらねじ込むAND1プレーが非常に多い。それも、2ポイントでのAND1の頻度が他の選手よりも段違いに高く、もはや彼女の代名詞と呼んでもいいレベルだ。どうやら本人にもタフショットマスターの自覚はあるらしく、その要因を論理的に説明してくれた。