先駆者たちが信じる3×3.EXEの存在価値と可能性(前編)より続く
今後の3×3の発展を見据えていく上で、昨夏の東京2020オリンピックを大きな節目にしなければならないことは間違いない。男女ともメダルに届かなかったとはいえ、決勝トーナメントに進んで期待を抱かせたことも確か。普段バスケットを見ない層にも十分にアピールでき、これをきっかけに3×3を広く認知していくことが求められていたが、大会から1カ月余りが経った2021年9月、落合は厳しい現実を目の当たりにする。
「オリンピックが盛り上がったので、試合をたくさん見ていただきたいという気持ちがやっぱり強かったんですよ。でも、オリンピックの後に最初にプレーした3×3.EXE PREMIERのプレーオフは、会場にお客さんを入れることができなかった。コロナ禍の影響で無観客が増えるのは仕方ないと思ってはいても、“第2章” に向けて盛り上げていこうという中でなかなかそのスタートが切れないという歯がゆさはありましたね」
世界中を襲ったコロナ禍が3×3にも影を落としてしまった格好であり、不運に見舞われたという側面は最も大きかった。海老原氏も、それを差し引いたとしても「期待値に比べると物足りなかった」と言いつつ、やはり無念さをにじませる。
「同じアーバンスポーツのくくりで、オリンピックはスポーツクライミングと同じ会場だったんです。仕事場でもその関係者と席を並べて仕事している状況だったんですが、そこでスポーツクライミングは日本がメダルを獲って、その後の社会的露出などを見ているとオリンピックの影響はあったと感じるので、それは羨ましかったですね。日本はオリンピックが終わると通常営業になってしまうところもあって、PREMIERでお客さんが今シーズンすごく増えたかというとそうではない。オリンピックでは7000席用意した会場が無観客により誰もいないという経験もしましたし、不可抗力とはいえ埋まってほしかったなと。本来なら埋めるべきだったし、埋まるはずだった。そういう大きな会場でいつかまた3×3をお披露目したいという気持ちはありますね」
そして、東京2020オリンピックそのものに表れた課題もある。代表選手のうち、3×3.EXE PREMIERで長いプレー経験を持つのが落合だけだったという点だ。3×3で国内のメインストリームとなっているリーグとしては、強化面での成果も必要。海老原氏は危機感を隠さない。
「7チームで平塚のアスファルトの上で試合をした初年度に比べるとチーム数も大幅に増えて、全国に裾野を広げることはできていますが、どれだけの選手がワールドツアーに出ているかということを考えても、プロリーグとしては物足りないと思います。一部のチームが強くて実力差が生まれていることも課題で、今まで急成長してきたフェーズから東京2020オリンピック後のフェーズに入って、3×3.EXEとしてレベル向上は避けて通れない部分です」