昨夏の東京大会からオリンピックの正式種目になったものの、3x3は歴史が浅い分まだ十分に認知されているわけではなく、ファンの注目度も5人制にまだ及んでいなければ、競技人口も必ずしも多くはない。そんな中で桂葵が前田有香とともに競技の普及と発展に動き出したことは先頃紹介したばかりだが、5人制プロから転向して3x3の将来性を見出し、いち早く普及活動を始めたのが齊藤洋介だ。
プロサーキットという世界の舞台に立つなど、UTSUNOMIYA BREXの選手として国内で突出した成績を残し続け、あと一歩届かなかったとはいえ東京オリンピックの代表候補にも名を連ねた齊藤が、プレーの面で強烈な光を放っていることは言うまでもない。その一方で、「次世代の育成と環境作りを支援する」と謳って株式会社Neveleを設立し、スクール事業や全国でのクリニックなどを展開。競技の発展にも力を注いでいる。
齊藤の活動は年々、いや、日々幅を広げ、会社を設立した昨年のうちにYOSK CHALLENGEと銘打ったプロジェクトを開始。3x3に取り組む高校生を増やすべく、若年層の環境整備に乗り出した。この夏からは、その一環として3x3 YOUTH TOURがスタート。U18世代からラウンドごとに参加チームを募り、3x3.EXE PREMIERと同じように予選リーグと決勝トーナメントを戦ってラウンド優勝を競うというものだ。その第1ラウンドが8月13日に開催され、会場の埼玉県立久喜高には女子10チーム、男子13チームが集結した。
その中で、男子の部には個人で応募した4人の選手で組まれた即席チームもあった。これは、齊藤が開催2日前になって急遽募集したもの。競技の裾野を広げたいという齊藤の想いが表れた端的な例と言っていいだろう。
「『部活に所属していないんです』とか『やりたいけどチームがない』とか、そういうDMがよく来るんですよ。だったら、一歩踏み込む勇気が彼らにあるのであれば当日集まったメンバーで組んで試合をしてもらう枠を作るのも面白いと思ったんです。この大会はU18ですが、次の秋田のラウンドからは中学生も出られるようにして、とにかく若い世代にどんどんやってもらいたいと思ってます」
齊藤は大学時代にドロップアウトして一度はバスケットから離れたが、代々木公園のビッグトーナメントALLDAYに出場してストリートボール関係者の目に留まり、YOSKの名でLEGENDに参戦。ほぼストリート叩き上げの状態から、その後5人制のプロとして活躍し、3x3では世界を相手に戦うまでになった。裾野を広げたいという想いは、齊藤自身が歩んできた環境に導かれて生まれた。
「LEGENDのボーラーなんて1回ドロップアウトした人ばかりで、そういう人たちにオリンピックの正式種目で日本代表になれるチャンスがあるのが今だと思うんです。僕なんてトラックの運転手から日本代表になったわけで、夢があるじゃないですか。もっともっと知ってほしいんですよ、『誰にでもチャンスはあるんだよ』って」