とは言っても、41歳ともなれば体にはどこかしら衰えも出てくるもので、日々の練習などが苦痛になってきたとしても不思議ではない。しかし、鈴木のクロスオーバードリブルは今なお対戦相手にとっては大きな脅威であり、瞬間的なスピードも健在。プレーする姿からは、年齢面の不安は微塵も感じられない。一つ確かなのは、鈴木の土台にはストリートボーラーとして培ってきたメンタリティーがあるということ。「精神が肉体を凌駕する」というフレーズを、鈴木は当たり前のことのように体現しているのだ。
「純粋にバスケットボールが楽しいです。それが全てというか、他の人ならキツいと思うようなこともたぶんキツいと思ってないんでしょうね。むしろ、どうやって新しい工夫をしようかというチャレンジとか楽しみに変わる。それってやっぱりストリートなんですよ。何でもゼロからやってきたんで」
短期間ながらF’SQUADにジョインしたことがあり、鈴木の後輩にあたる三井秀機(M21、FUKUOKA.EXE)は「ストリートはやり続けてなんぼ」と言った。そして、「バスケットから完全に離れるのは100%無理」とも言っている。3x3.EXE PREMIERには三井の他にも高橋亮介(仮エース、LEOVISTA BB.EXE)や池田千尋(CHIHIRO、TACHIKAWA DICE.EXE)など、同じ時代に同じ舞台でしのぎを削ったボーラーが今もプレーしているが、おそらくは彼らも多少なりとも三井と同じ意識を持っているだろう。鈴木に関しては、言わずもがなである。
「ストリートボーラーとしての目標は、気持ち悪がられるまでやり続けること。『あいつ気持ちわりぃな』みたいな(笑)。それがネガティブを通り越してポジティブになるまでやり続けてやろうと思ってます。昔からやってきている連中のことは厳しい目で見ちゃいますし(笑)、同じように僕も厳しい目で見られるんだろうなと思うので、身が引き締まりますね。自分自身、『もっとできる』という気持ちは常にあります」
普通の人なら「気持ち悪い」と言われたいとは思わないものだが、長く現役を続けている選手が「妖怪」と表現されることは往々にしてあり、失礼を承知で言うと、41歳にして未だインパクトのあるプレーを披露する鈴木も既に十分気持ち悪い妖怪である。オリンピックの舞台に立てなくてもモチベーションを失わなかった鈴木は、これからも目の前にあるものにフォーカスし、自らを高め続ける。ストリートでも3x3でも、キャリアのゴールにたどり着くことは当分なさそうだ。
「先のことはあまり考えてないですね。1日1日が勝負というか1ゲーム1ゲーム、短いスパンの勝負だと思ってます。日々淡々とベストを尽くすことが大事かなって。毎日チャレンジすることが日常で、その延長線上に大きな目標が見えてくると思うんです」
文・写真 吉川哲彦