8月7日に行われた3x3.EXE PREMIERのKANTOカンファレンスは、TOKYO DIME.EXEがラウンド制覇。まだ今シーズンは2ラウンド残っているが、ここまでは全チームが集結したクロスカンファレンスカップを除く全てのラウンドを制し、カンファレンス内で他を圧倒している状況だ。
そんなチームの顔であり、精神的支柱でもあるのが鈴木慶太。この日も決勝でKO弾を含む5本の2ポイントを炸裂させる活躍を披露してMVPに選ばれている鈴木が、リーグを代表する選手の1人であることは誰もが認めるところだろう。
そして同時に、日本におけるストリートボールの黎明期を支えた重要な存在であることも忘れてはならない。伝説のストリートボールクルー、FAR EAST BALLERSの一員として個人戦リーグ・LEGENDの創設ボーラーに名を連ね、ほどなくしてチーム対抗リーグであるSOMECITYの立ち上げに際しても中心人物の1人となった。K-TAの名で一躍トップボーラーに名乗りを上げた当時はまだ20代前半だったが、15年以上を経た41歳の今もSOMECITYやALLDAYトーナメントではF’SQUADの大黒柱に君臨している。
3x3選手としての側面に話を戻すと、こちらでも鈴木はパイオニアと呼ぶべき存在だ。遡ること10年前、ロシア・ウラジオストクで開催された世界大会に出場し、日本人で初めて公式戦で3x3をプレーした選手の1人が鈴木なのである。以来、鈴木はこの競技に日本が世界と渡り合う可能性を見出し、第一線を走り続けてきた。そして、東京オリンピックで3x3が正式種目となったとき、鈴木の目の前に大きな目標が生まれたのだ。
ご存じの通り、その目標は残念ながら叶わなかった。しかし、そこで鈴木のモチベーションが一気に失われたわけではない。オリンピックに限らず、「世界と戦う」ことが鈴木にとっての最大のモチベーションであり、FIBAプロサーキットという大舞台を目指すのは鈴木自身にとってだけでなく、日本の3x3シーンの発展にとっても重要なことなのだ。
「オリンピックもすごく大きな目標だったし、家族との約束みたいなところもあったので、モチベーションとしては大きかったです。でも、3x3をやる上で『世界に向けて挑戦していく』というのが、自分の中では一番大きなテーマ。またプロサーキットの舞台に上がって、どこまでできるかチャレンジしたいという想いがあります。プラス、そこを目指すと日本のポイントのためにもなるというのもあるので、もちろん国内の舞台でファンの皆さんの前でプレーすることもすごく大事なんですが、自分自身は世界に挑戦したいというのが一番です」
日本がオリンピックのような国際大会に出場するためには国別ポイントを稼ぐ必要があり、それにはまず日本のチームがプロサーキットの舞台に立つことが近道。鈴木は個人としての意欲もさることながら、日本の3x3シーン全体への貢献も意識しているというわけだ。「パイオニアという感じはないんですけど」と本人は言うものの、その意識の持ち方にはやはり初めて3x3をプレーした日本人の1人としての責任感が表れている。
「ゼロから関わらせてもらってシーンを作ってきたという自負というかプライドはあります。日本の3x3が大きくなってもそこに驕るわけではなく、どうやったらもっと大きくなるだろう、良くできるだろうって、自分のプレー面も含めて業界全体のことを考えてはいますね」