東京オリンピックから歴史を刻む新種目『3×3バスケットボール』妥協なき準備の舞台裏(前編)より続く
安全に大会を実現するための感染症対策と暑さ対策
3×3の舞台となる青海アーバンスポーツパークでは、5月にテストイベントが実施された。選手やメディアをはじめて会場に受け入れ、試合をするコートだけではなく、動線の確認など様々なシミュレーションを行うことができた。選手たちの待機所となるアスリートラウンジの使い方ひとつ取っても、たくさんの発見があった。
「今はテーブルと椅子を並べていますが、本番では少し間引きます。選手はテーブルで休むことはなく、床に寝て足を高い位置に上げて休憩していました。物を配備するのではなく、空間を提供していかにリラックスしてもらうかというのは、テストイベントを通じてすごく参考になりました。この会場は横に長いため、ラウンジよりさらに奥にウォームアップコートがあり、試合会場まで3〜400mほど歩きます。コールルームという試合前の準備をする場所があり、そこから試合会場に入るのですが、ここまでの移動が思ったよりも時間がかかりました。選手の動きがゆっくりだったり、荷物を取るためにラウンジに寄ったり、この移動中にも想定外のことが起こり、いろいろな気づきを得る機会でした」
細心の注意を払って取り組む感染症対策は、「さまざまな場所にパーテーションを設置し、消毒液やサーキュレーターも至るところに置いています。暑い中で行われるので、アスリートラウンジなどは空調が欠かせません。と同時に、換気もしなければなりません。そのコントロールも重要になります。また会場内の動線で、選手同士やメディア、スタッフと交錯しないように、人のオペレーションで回避することを今は想定しています。ただ、ここもまだまだ工夫が必要だと思っています」と余念はない。さらに、屋外競技ゆえに暑さ対策も重要となる。組織委員会のオフィスにはさまざまな競技担当者がおり、そこで多くのヒントを得ていた。
「ビーチバレーは灼熱な砂の上で行う競技であり、氷の補充やその量、さらに保管場所など、どうやって冷えたドリンクを提供できるかは共有してもらいました。どちらも仮設会場なので、氷も多過ぎては保管しきれず溶けてしまうし、足りなければ選手のコンディション維持に支障をきたします。そのオペレーションはとても参考になりました」
オリンピックへ向けた妥協なき準備は、「アスリートも運営側も同じです」と安田さんは力を込める。また、1年の延期によってピークが過ぎてしまい、引退を余儀なくされた選手がいるように、「泣く泣く組織を離れていった人も多くいました」というのも同じである。組織委員会は東京2020オリンピックが終われば解体され、メンバーの多くは次のステップへ進むことになる。当初は2020年夏に開催され、逆算した1年前から次へ向けた就職活動などがはじめていた方もいた。