2012年は3on3新世紀の幕開けである。この夏、FIBA、NBAがこぞって3on3のイベントを仕掛けている。まずは2016年リオデジャネイロ・オリンピックで正式種目を目指すFIBAは「3X3」をスタートさせ、世界5都市でワールドツアーを実施。NBAは「NBA 3X」と称し、カナダ各地でトーナメントが開催されている。どちらも賞金トーナメントとなり、腕っぷしに自信ある各国ボーラーが賞金獲得を目指し、国境を越えて参加しているようだ。
ソーシャルでつながる3X3
気軽にプレイできるイベントとして、3on3は人気がある。熱戦が繰り広げられているロンドンでも、オリンピック期間中は連日のように「3X3」ピックアップゲームやオープントーナメントをFIBAが主催し、オリンピック正式種目へ向けて普及に力を注いでいる。人数を集めてチームとしてエントリーするのはもちろんだが、「3X3」はネットを介して個人登録ができるのも、ソーシャル時代ならではの試みである。プロフィールを見て「一緒に大会に出ようぜ」と、簡単に国境を越えてオファーができたり、世界規模での拡大を期待している。また、国内でもまだ見ぬ才能あるボーラーを発見できるかもしれない。
3X3ワールドツアーに参戦した2つの日本人チーム
すでに「3X3ワールドツアー」は、7月14-15日にブラジル・サンパウロ、そして7月21-22日にはロシア・ウラジオストックで開催された。5つのツアー都市の中では、日本からほど近いウラジオストック大会に、2つの日本人チームが参加。一つは日本バスケットボール協会(以下JBA)のエグゼクティブパートナーであるゼビオグループの名をつけた福島レペゼン「スポーツゼビオジャパン」。メンバーは田渡 凌、早川ジミー、真庭城聖(SOMECITY/MONEY)、八幡 幸助(元bj千葉)の異色な4人。もう1チームは、フランスで行われたストリートボールトーナメント(5on5フルコート)QUAI54にも参戦した「RISING SUNS」の中からSOMECITYボーラーであるK-TA、WORM、AB、TAKATOが出場。
結果は以下の通り、「スポーツゼビオジャパン」は1勝3敗、「RISING SUNS」は2勝2敗で予選リーグ敗退となった。
スポーツゼビオジャパン
- ニュージーランド・オークランド 20-7 スポーツゼビオジャパン
- アメリカ・ニューヨーク 13-21 スポーツゼビオジャパン
- ロシア・ハバロフスク 16-15 スポーツゼビオジャパン
- ドイツ・ドルトムント 10-12 スポーツゼビオジャパン
RISING SUNS
- 中国・広州 13-14 RISING SUNS
- オーストラリア・メルボルン 21-12 RISING SUNS
- ロシア・アムール 21-16 RISING SUNS
- シンガポール 12-17 RISING SUNS
8月1日(水)に行われたSOMECITY TOKYO 1st FINAL開催時、RISING SUNSメンバーとスポーツゼビオジャパンとして参戦したMONEYが「3X3ワールドツアー」のジャージを着て、コートに立った。MC MAMUSHIによる公開インタビューが行われ、参戦ボーラーたちから大会についての報告があったのでその模様を紹介しよう。
RISING SUNSインタビュー(Special Thanks. MC MAMUSHI)
- MAMUSHI:今回RISING SUNSの最年少ボーラーながらキャプテンとして参加したTAKATO。ウラジオストックでの3X3はどんな感じだったか概要を教えて?
- TAKATO:応援ありがとうございました。知ってる方もいるかと思いますが、まず成田空港で6時間半も飛行機が飛ばず、なんとか無事にその日中にウラジオストックへ向けて出発できたのですが、現地に着いたのが時差の関係も含めて夜中の2時。ホテルに着いた時には朝4時を過ぎてました。そこから少しだけ寝て、朝ご飯をパパッと食べて会場に行き、シューティングしてオープニングセレモニーに参加……という出発から試合開始までがものすごく慌ただしかったです。試合は午前中に2本行い1勝1敗。午後も2試合があって同じく1勝1敗。同ブロック3チームが2勝2敗で並びましたが、得失点差の結果で決勝トーナメントには進めませんでした。
- MAMUSHI:世界大会なわけだから、どんな国からチームが出てたの?
- TAKATO:12カ国が出場しており、自分たちのブロックにはロシア、オーストラリア、中国、シンガポールのチームが出ていました。地元ロシアのチームが多く出てましたが、他にもスリランカなども出場していました。
(※筆者追記:ロシア、チャイニーズ・タイペイ、オーストラリア、インドネシア、スリランカ、ニュージーランド、アメリカ、ドイツ、中国、シンガポール、日本から15チームが参戦。1カ国から複数チームが出場したのは地元とロシアと日本のみ)
- MAMUSHI:世界のチームと3on3で戦って見てどんな手応えだった?
- K-TA:この大会のルールは、FIBAが推進する3X3という独特のルールだったんだけど、RISING SUNSはパリでのQUAI54でフルコート5on5でのストリートボールトーナメントを戦った経験を踏まえて言うと、3on3の方が(勝てる)可能性があると思った。ロシアのチームには善戦して最後は負けてしまったけど、そのチームは結局この大会で3位になった。正直言って、その試合に勝つチャンスはあったと全員で話していたし、悔しかったというか、もっとできたという手応えは感じてる。
- MAMUSHI:220cmのビッグマンも出てたそうだけど、世界レベルの体格と対戦してみてどうだった?
- AB:ニューヨークのチームには220cmの選手(※筆者注:ケンタッキー大学出身のShagari Alleyne aka Skyscraperという選手でロスターでは221cmと表記。アメリカマイナーリーグPBAでプレイ)がいました。僕(191cm)と並んでも肩に届かないほどでした。対戦したロシアのセンター(※Evgeniy Zhukov選手/205cm・103kg)もやっぱりデカくてムキムキの選手がおり、僕らの身長ではフォワードまたはガードくらいの身長になってしまいます。それでも何もできないわけではなく、普段SOMECITYで見せているスキルは世界のデカい選手を相手にも通用していました。特にリバウンドはがんばっていたよね。
- WORM:そうそう。
- AB:とりあえず僕が言いたいのは、SOMECITYで皆さんの前で見せているスキルは(世界でも)全然通用したぜってことだし、もっと行けると思ってます。普段、(SOMECITYに来てくださる)皆さんのサポートのおかげでいろんなことを試せているので、本当にありがとうございました。次に行く時にはもっと頑張ってきます。
- MAMUSHI:通用したってことでWORMにも聞いてみよう。
- WORM:ABちゃんが全部言ってくれましたが、リバウンドは全然通用しました。でも、220cmとか大きな選手がいて、高さの部分では負けてしまいますが、そこは俺たちがいつもSOMECITYでやってることをそのまま出して来たし、チーム練習も結構やって行ったので良い感じでした。世界でも通用したと思ってるので、今後も機会があれば参加していきたいし、今度は良い結果を持って帰れるようにがんばるので、皆さん応援よろしくお願いします。
- MAMUSHI:MONEYはRISING SUNSとは違うジャパンチームで出たけど、そっちはどうだった?
- MONEY:今回、若いチームだったので、アメリカとニュージーランド、ドイツと結構きついグループに入っていたので厳しい試合でした。特にアメリカには(さっきに話題に出た)220cmがいました。若くて能力がある選手たちといっても、初戦(オークランド戦)は大差(20-7)で敗れてしまいました。俺たちは日本代表として来てるわけだから絶対に1勝をもぎ取って帰ろうと気合いを入れ直して、最後のドイツに勝って何とか最低限の仕事はしてきたなと思います。これからもいろんな世界大会に出て行くと思いますが、俺らがやらないといけないと思いました。応援よろしくお願いします。
- MAMUSHI:ちなみにラストのドイツ戦(12-10)は、MONEYがウイニングショットを決める活躍をしたんだよ。
ではラスト、TAKATOに締めてもらおう!
- TAKATO:今回、自分たちが勝てたのはシンガポールと中国という同じアジア圏のチームだけでした。次回こういうチャンスがあった時はアメリカやヨーロッパ諸国のチームに勝てるようにがんばるので、これからも応援よろしくお願いします。ありがとうございました。
世界で羽ばたける3X3環境
これまでもNIKE主催の3on3大会優勝チームがアメリカに渡り、NBA選手などと交流しながら本場のバスケ文化に触れるツアーを行い、それがTVCM化されたり、HOOP IT UP 日本開催は優勝チームがアメリカ大会に出場できたりと、単発ながらアメリカへ挑戦できた3on3大会はあった。しかし、バブル崩壊やブーム終焉により、大会自体が衰退していった。
ゼビオグループは、今年も福島県でゼビオカップを開催した。JBAもまた、3X3ルールでの全国大会を実施。JBAとゼビオが提携し、3on3を楽しむボーラーを巻き込みながら、バスケットボール競技人口100万人を目指す。願わくば、今後はこのJBA主催大会やゼビオカップが全国規模となり、その頂点から3X3ワールドツアーへとつながれば、一気に「3X3」に火がつくはずだ。優勝賞金として渡航費などをサポートしてもらえれば、世界が身近になる。
また、単なる一般参加大会にせず、プロ選手もどんどん参加しながら活性化することで、2016年リオデジャネイロ・オリンピックでの正式種目へ向けて拍車がかかる。優勝して世界に出なければ、トップレベルのボーラーと渡り合えないというのは、予選会として盛り上がりに欠ける。来シーズンより新リーグが始まるわけだから、そのトップ選手たちがこぞって参戦することで3on3と競技バスケのヘンな垣根は無くなり、バスケットボールは再び盛り上がる……かもしれない。
歴史を振り返っても、3on3ブームの頃は、NBA選手が来日して3on3大会優勝チームと一緒にプレイする機会があった。JBL選手たちもまた、折茂選手(レバンガ)など日本代表クラスの選手がチームとなって、一般チームに胸を貸すこともあった。しかし、何が起こるか分からないのもまた、3on3の醍醐味であり、ギリギリの試合になることもあった。フルコートよりもアップセットが起きやすい3on3は、プロ選手たちにとっても良いプレッシャーの中で戦うができ、スキルアップにつながるはずだ。
民間企業による選手強化
オリンピックの話題として、アマチュア選手を支える企業を紹介するコラムを目にした。その中に体操金メダリストの内村航平選手が所属するコナミが、毎年コナミオープンなる水泳競技大会を開催してることが紹介されていた。その大会には、ロンドンでメダリストとなった「入江陵介選手や立石諒選手が高校時代に出場していた」とあり、「民間企業ながら選手強化の場を提供してきた」ことを称えていた。
なかなかオリンピックに出られない男子バスケ界にとって、新種目を目指す3on3はRISING SUNSの報告を聞いても、入り込む余地はありそうだ。ゼビオが民間企業としての選手強化の場となる大会を提供していけば、目標である競技人口100万人も合わせて、思い描くビジョンは達成できる。
ネットや空路の発達により、90年代初頭の3on3ブームの頃に比べれば、格段と世界は近くなった。3X3を通じてアウトバウンドしながら、日本のバスケットボールを普及させる道もあるのではないか。一気に回り始めたこの夏の3on3の動きを見て、そう思わずにはいられない。