2014年からスタートした3×3プロリーグ「3×3.EXE PREMIER」。5年目を迎える今シーズンは36チームに倍増し、Bリーグが終わったあとの6月9日より開幕する。さらに追加発表されたのが、世界初となる女子3×3プロリーグの誕生だ。
女子3×3の歴史をたどれば、女子U18日本代表の高校生たちが2011年に行われた第1回ユース3×3世界選手権で銅メダルを獲得し、2016年の3×3 U18アジア選手権では優勝に輝いている。そんなポテンシャルの高い女子3×3のプロリーグ誕生に先駆け、タイミングよく3月18日にブレックスアリーナ宇都宮で「3×3.EXE TOURNAMENT 東地区予選」が行われた。どんなチームが、どんな選手がいるのかと興味が沸く。するとそこには、予想だにしない知った顔ぶれが多くおり、うれしくなった。
東地区予選を優勝した『come』4人中3人がWリーグ&女子日本代表OG
東地区予選を制したcome(コメ)には、元富士通レッドウェーブの名木洋子選手と石川麻衣選手、元三菱電機コアラーズの橋本和子選手が参戦。1チーム4人構成の3×3において、WリーグOGであり元女子日本代表の3人を擁するcomeは全勝で決勝トーナメント(4月7日-8日/ゼビオアリーナ仙台)への切符を手にした。
昨年の愛媛国体に出場し、今なお5on5のバスケットを続けている名木選手。しかし、3×3は勝手が違ったようで「ずっと無酸素状態な感じ」とそのきつさを表現している。「もともとSOMECITY(老舗3on3リーグ)を見たりするのが好き」という石川選手は、すでに3年目の経験の持ち主。1on1での勝負が多くなる3×3の難しさを感じていたが、「インサイドでは思い切ってガツガツ攻めれば良いんだな」と直前に見ていたSOMECITY FINALに刺激を受けて臨んだ今大会では、アグレッシブにゴールへと向かっていた。
名木選手と石川選手はともに昨年の3×3日本選手権にも参戦していたが、橋本選手はこれがはじめての3×3。バスケットをするのは約1ヶ月ぶりであり、その前は半年以上さかのぼらねばならないほど疎遠状態だった。「人数が足りないと言うから呼ばれただけ」というのが参戦のきっかけであり、大会の内容も知らないまま連れて来られた。その現場で、「勝ったら(決勝トーナメントが行われる)仙台に行くことさえ知らなかった」と目を丸くする。
予選ラウンドはコート上での口数も多く、爆笑しながらの戦いに見ているこちらもつられて笑ってしまった。しかし、Wリーグを経験してきたトップアスリートだけあり、試合が進むにつれてしっかりとアジャストしていく。発する言葉もバスケットらしくなるとともにチームケミストリーが向上し、何よりも表情が変わっていた。
決勝戦では果敢にドライブで攻め込み、そこからキックアウトパスでチャンスを作っていく橋本選手は現役時代そのものである。「ここまで来たら賞金を獲りに行かないと」と本気モードになったcomeが、SpaceBall Magとの接戦を制し、東地区チャンピオンになった。
女子チームを結成し、地元を盛り上げる『湘南サンズ』
昨シーズンまで「3×3.EXE PREMIER」に男子チームが参戦していた湘南サンズ。しかし、全国を転戦するよりも、もっと地元湘南地区での活動に注力したいというのが石田剛規オーナー(東京エクセレンス・ヘッドコーチ)の考えである。そこで今シーズンは女子チームを結成し、イベントに参加したり、クリニックを行ったりしながら地盤作りをスタートさせたばかりである。チームとして、3×3の大会に出場するのもこれがはじめてだった。
湘南サンズは女子プロリーグ発足に向けてできたわけではない。及川啓史GMは「女子チームを作ったらプレミアができた」というタイミングであり、世界で活躍する女子選手に目をつけてチームを結成。本田雅衣選手(元JX-ENEOSサンフラワーズ/羽田ヴィッキーズ)と小沼めぐみ選手(元富士通レッドウェーブ)が今大会に出場したメンバーの中でWリーグOGである。準決勝で湘南サンズを破って準優勝したSpaceBall Magでの参加となった安江舞選手(元羽田ヴィッキーズ)もチームの一員だ。Bリーグの解説などで活躍する中川聴乃さん(元シャンソン化粧品/デンソーアイリス)はフロント兼選手としてロスター入りしている。さらに早稲田大学出身、世代別代表として数々の国際大会に出場してきた桂葵選手と根岸夢選手を擁し、タレントは揃っている。
はじめての3×3に挑んだ湘南サンズのWリーグOGたちにも感想を伺った。本田選手は「ディフェンス時にどう守るかも気にしなければいけないし、負けているときにどう点数を獲っていくかをもっと考えながらプレーしていかなければいけないとすごく感じました」と言えば、小沼選手も「無駄な動きをしてしまい、それで疲れてしまってシュートも全然入らなかったです」と出てくる言葉は反省点ばかり。優勝したcomeの試合を見ていた富士通時代の後輩である小沼選手は、「先輩方は3×3慣れしていて、あらためてすごいなと思いました。尊敬しています」。湘南サンズも決勝トーナメント進出を決めており、仙台では対戦が実現するかもしれない。
本田選手と羽田で一緒にプレーしていた安江選手は、「Wリーグは引退しましたが、3×3でまた一緒にプレーできるのはうれしいです」。3×3という新たな舞台で、引退した選手たちの活躍をふたたび見られるのはファンにとってもうれしいはずだ。
東京オリンピックへの思いはまだ漠然としているが、女子3×3は盛り上げたい!
3×3は東京オリンピックでの正式種目となり、昨シーズン限りでWリーグから転向した矢野良子選手(元ジャパンエナジー(現JX-ENEOS)サンフラワーズ/富士通レッドウェーブ/トヨタ自動車アンテロープス)は精力的な活動を行っている(弊誌フリーペーパーVol.11で紹介)。4月29日からはじまるアジアカップは女子チームもエントリーされており、すでにプールDと組合せも決まった。日本代表にどんな選手が名を連ねるのか興味深い。
しかし、今回参戦したWリーグOGたちに東京オリンピックについて伺えば、まだまだ漠然としか考えられていないようだ。小沼選手は「ほんの少しだけ頭の片隅にある程度」であり、今回の出場者の中では経験豊富な石川選手も「まだ女子3×3が走り出したばかりなので、正直そこまで考えられていない」のが現状である。それでも女子3×3プロリーグには期待しており、名木選手も「視野に入れている」。2年後へ向けてここからがスタートであり、「3×3をもっと盛り上げてレベルアップしていければ、良いものはできてくる」と本田選手が言うように、彼女たちもパイオニアとなることだろう。
今週末3月25日(日)には西地区予選が行われ、「前田(有香)さん(元アイシンAWウィングス)や田中(友美)さん(元デンソーアイリス)が出ると聞いてます。たぶん勝ち上がってくると思うので、仙台で対戦できるのを楽しみにしています」と石川選手は言っており、トップアスリートたちは今なおバスケットへの情熱をコートに注いでいる。
WリーグOGたちの参加も期待される3×3.EXE PREMIERの女子プロリーグは7月28日より開幕する。現在、チーム募集とともに選手登録がはじまった。
文・写真 泉 誠一