私淑するスポーツライターの言葉に「スポーツは批判的に見ないで、心から楽しんで見ることが大切だよ。原稿を書きすぎると、つい仕事の目線になってしまう。書きすぎはよくない」がある。
「どこか軽すぎやしないだろうか」、「これで5連覇できるだろうか?」。
大会の序盤にそう思ったのは、恥ずかしながら事実である。
しかし3戦目の韓国戦を終えた後に、赤穂ひまわりが「いいバスケットができなかったとしても、勝つことが最優先で、勝ててよかった」と言っているのを聞いて、私のなかの風向きは完全に変わった。
中学生のときから取材をし続けても、どこか自信なさげに強い言葉を話さなかった彼女がそんなことを言うなんて。
ああ、やはり原稿を書きすぎると、仕事目線になるのかもしれない。
どこか、彼女たちはこうだという先入観を持っていたのかもしれない。
しかし彼女たちもまた、凡人には計り知れないさまざまな成長を積んでいるのだ。
批判的に見るより、今回であれば、彼女たちの持つ軽さを楽しんで見てみると、実はそこに “軽快” で “軽妙” なバスケットがあるとわかる。
豪快な笑顔の裏に強い責任、強い自覚があるとわかる。
今回であれば、と書いたのには訳がある。
日本代表は軽ければいいというものではない。
今回の選手たちのパーソナリティがたまたま軽くて、明るい子たちが多いというだけであって、中には職人のような重厚感のある選手がいてもいい。
それぞれが持つパーソナリティを発揮し、お互いのそれを受け入れ、組織としてそれらを自在に発揮していく。
恩塚ヘッドコーチが標榜する「個々の判断にシンクロする」バスケットを40分間貫いたとき、そこに世界の国々がまだ達し得ない日本独自のスタイルができあがるのだろう。
現代バスケットはインテンシティの高さが叫ばれ、フィジカルコンタクトも欠かせない。
ついつい熱く、体を硬くしがちだけれども、それを笑顔でサッと通り抜けていった彼女たちのバスケットは痛快だった。
5連覇という偉業はもとより、今回の優勝はバスケット界に限らず、スポーツ界にも新たな風を吹き込む勝利だったと思う。
女子日本代表 × FIBA女子アジアカップ2021
叱咤なき女子日本代表の新たな船出へ
日本を次のステージへ ── 恩塚亨ヘッドコーチの挑戦
文 三上太
写真提供 fibaasiacup