そんなことを書いていると、プレスルームにあるテレビでは中国がボスニア・ヘルツェゴビナを圧倒していた。
前日が107点、きょうが98点。
相手が相手とはいえ、明日のアメリカ戦に向けて、はずみをつけたと言っていい。
中国とアメリカは4年前のワールドカップでも予選ラウンドで対戦していて、そのときは<中国88-100アメリカ>という結果だった。
さて、4年の歳月を経て、当時から経験を積み重ねてきた中国が、世代交代を進めるアメリカにどんな試合をするのか。
明日はこのゲームが最注目だろう。
続いておこなわれたのはフランス対カナダという注目のカードだった。
前日に地元・オーストラリアを破ったフランスと、日本がたった今敗れたセルビアを破ったカナダ。
勝ったほうが決勝トーナメントに大きく近づく大事な一戦。
接戦を予想していたのだが、蓋を開けてみると、大きな見どころもないままゲームが終わってしまった。
フランスは45点しか取れなかった。
一方のカナダも、キア・ナースらWNBA選手が3人いるものの、これといった特長が見出せないまま、59得点に終わっている。
いずれも東京2020オリンピック後にヘッドコーチが代わり、あるいはまだまだチーム再建の真っ只中で、不安定な時期なのかもしれない。
大会2日目の最終ゲームはオーストラリア対マリ。
結果は118-58でオーストラリアが圧勝。
これほどの大差になれば、経験の浅い若手も起用されやすくなる。
たとえば前日のフランス戦では出場機会のなかったオーストラリアのアネリ・メイリー。
彼女は前夜の試合後、コンディショニングのために、一人でコートを何往復もダッシュしていた。
静まるアリーナの床を蹴る音と、彼女の息遣いだけがかすかに響いていたのを聞いている。
そんな彼女もきょうのゲームでは14分27秒、コートに立っている。
彼女のワールドカップはこの日から始まったといっていい。
オーストラリアの次世代のエースと目されているエジー・マグベガーもまた、プレーの粗さを残しながら、一方で少しずつ主力メンバーとの息を合わせ始めている。
予選最終日がおこなわれるころにフィットしていれば、対戦する日本としても嫌な存在になるかもしれない。
さらにはマリのシカ・コネも紹介しておきたい。
弱冠20歳。
2019年、2021年とともにU19のワールドカップに出場し、2021年には同大会の得点王とリバウンド王に輝き、チームを史上初のベスト4まで導いている。
前後して、WNBAのニューヨーク・リバティーにもドラフトされている。
相手がA代表になるとまだまだ跳ね返されてしまうのだが、この経験を生かせば、彼女もまた、いずれは厄介な存在になるかもしれない。
日本だけでなく、世界にも伸び盛りの、あるいは粗削りだが、光る何かを持った若者がいる。
赤穂はもちろんのこと、コネが出場したU19ワールドカップに出ていた平下愛佳や東藤なな子もうかうかしていられないだろう。
そんなことを思いながら、締めの文章をどうしようかと思案していたら、オーストラリア代表のメイリーが、今夜もまたストレングスコーチを伴って、ダッシュをし始めた。
強度は前日よりも低めだが、試合に出たあとだからだろう、息遣いは明らかに前日よりも荒かった。
彼女はどんな選手になっていくのだろうか。
若者たちのワールドカップ2022はまだまだ始まったばかりである。
FIBA女子ワールドカップ2022「G’Day Straya!!」
1日目 世界はワクワクで溢れている!
2日目 動き出した若者たちの未来(ワールドカップ)
3日目 私たちはいつだって昨日を越えていく
文 三上太
写真 FIBA.com