久々に生で見た井上宗一郎は体も心もすっかり大きく成長していた。
取材の過程で彼が中学生のときに知り合い、福岡大学附属大濠に進んでからも『福大大濠のチームビルディング 育成と強化のメソッド』(ベースボール・マガジン社)を制作する際、ビッグマン役でモデルになっていただいた。
あれから6年が経とうとしている。
筑波大学を経由し、今ではサンロッカーズ渋谷に所属するプロ選手である。
もう気軽に「宗一郎」などとは呼べないでいるのだが、彼はミックスゾーンに現れるなり「お久しぶりッス」と挨拶をしてきた。
その気安さとは対照的に、試合における自己評価は思ったより手厳しい。
「自分に点数をつけるなら50点くらいかなと思っています。その理由としては、前半こそアジアカップでできなかったスイッチディフェンスが割とできていたと思うんですけど、後半に関しては逆にそこをドライブで狙われたりして、フリースローに繋がるファウルも犯してしまって、チームのファールがかさんでしまいました。それが後半、相手にアドバンテージを与えてしまったかなって考えていて、そこは反省点です。他にも前半はリバウンドに絡めていたんですけど、後半はリバウンドに絡めてない時間帯があったんで、そういうところもまた反省して、明日(のGAME2)に繋げていきたいと思います」
それでも彼に話を聞こうと思ったのには訳がある。
「SoftBankカップ2022」のGAME1、井上はチーム最多の33分43秒もコートに立っているからだ。
馬場雄大よりも、富樫勇樹よりも多い。
しかも彼はスタメンで起用され、試合終了のブザーが鳴ったときもコートに立っていた。
ワールドカップ予選でも、アジアカップでもなかったことである。
何がそうさせたのか?
それを聞き出したかった。
井上自身は3ポイントシュートではないかと言っている。
GAME1では6本打って、2本しか決めていない。
しかし打つべきときに自信を持って打てていたからこそ、彼も自信を持つのだろう。
「トム(・ホーバスヘッドコーチ)さんは、ビッグマンだとか関係なく、どんどん3ポイントシュートを打っていけという考えなんです。そもそも僕が最初にトムさんと出会ったのがディベロップメントキャンプだったんですけど、そのとき僕のことを『どういう選手か知らない』って言われたんです。『だから、どんどんアピールして』と。僕はシュートが得意だし、それ以前におこなわれた記者会見でもトムさんが『4番のシューターを探している』みたいな話をしていたので、そこで食らいついていきたいなと。4番ポジションの(3ポイント)シュートを頑張ろうと思っていて、その頑張りが認められたのだと思います」
確かに昔からシュートのタッチは非凡なものがあった。
しかし、高校生の頃は長い手足を持て余していて、そこに至るまでがどうにもぎこちなかった。
それが大学で体を鍛え、B.LEAGUEでもそれを継続してきたことで、ホーバスヘッドコーチが探していた「ストレッチ4」としてフィットしたのだろう。