結果か、内容か ── 。
スポーツではよく議題に上がるテーマだ。
一般的には、カテゴリー(年代)が低ければ低いほど、後者により比重がかかる。
そこから徐々に前者へとシフトしていくわけだが、一定のラインを越えるとそれさえも凌駕していく。
二者択一ではなくなるのである。
古来「二兎を追う者は一兎をも得ず」というが、ラインを踏み越えた彼ら・彼女らは二兎を追って、二兎とも得ようとしている。
アジアカップに臨む女子日本代表の話である。
チームの指揮を執る恩塚亨ヘッドコーチが目指しているのは、コート上の5人がチームの原則を理解して、瞬時にシンクロして協力してプレーできるバスケット。
チームの原則を理解して、という前提はつくものの、起点となるボールマンがチャンスを見逃さずにプレーを選択し、周りの4人がそれにシンクロ、つまり同調して動く。
これは口で言うほど簡単なものではない。
なにしろ「チームの原則はこうだ」と思っている選手が、ボールマンのそれとは異なる判断に素早く反応し、的確に動かなければならないのだ。
もしかしたら原則とはまったく逆の動きをしなければならないし、自分の立っている位置によっても、動き方は異なってくる。
いや、180度違うくらいの動きなら、彼女たちも対応できるかもしれない。
ほんの少し角度が違う。距離が違う。
そんな微調整を、瞬時に、的確にやろうとしているわけである。
ステレオタイプかもしれないが、日本だからこそできるバスケットなのかもしれない。
しかも、である。
今回のアジアカップは、オリンピックが閉幕して約1ヶ月で開幕する。
メンバー構成も半分以上が変わっている。
息を合わせるにはあまりにも時間が短い。
にもかかわらず、難題とも思えそうなオフェンスに舵を切るのはなぜなのか。
恩塚ヘッドコーチがその意図を明かしてくれた。
「1番のポイントは、それが一番結果が出ると思っているからです。その次にあるのは、バスケット界を変えたいという個人的な思いがあります。具体的に言うと、フリーランスにしすぎてカオスになってしまう。あるいはナンバープレー(セットオフェンス)をやりすぎてロボットになってしまう。そのどちらとも言えない状況のなかで選手自身が考えてプレーできる仕組みを、私たちがモデルになって作ることができたら、バスケットってどういうふうにしてプレーしていったらいいんだろう? という情報を発信していけるんじゃないかなとも考えています。結果が出ることと、バスケットの考え方を変えていくということにチャレンジしていきたいなと」