個人的には「吉」だと考えている。
狭き門ではある。
しかも2022年であればホスト国のオーストラリアと、オリンピックを制したアメリカはすでにその出場権を獲得している。
まさか彼女たちが各大陸予選で負けることはないだろうが、たとえ負けたとしても、ワールドカップ予選には出られる(と思う。その分、アジアとアメリカの最終枠の国が押し出されることになるのだろうが)。
さらにそこで負けても、本戦には出場できる(これは確定)。
ということは、実質アジアカップではオーストラリアを除いて3位以内に入り、ワールドカップ予選は、組み合わせ次第だが2位に入らなければいけないケースだってありうる。
それでも「吉」というのは、今回のアジアカップを通じて、日本の底上げが期待できるからだ。
今回は髙田真希や町田瑠唯、宮澤夕貴といったオリンピックで活躍した選手たち7名が、心身を休ませるためにロスターから外れている。
ケガのためにオリンピックに出場できなかった渡嘉敷来夢も、候補選手にこそ選ばれていたが、最終的には見送る形となった。
林咲希や赤穂ひまわりなど5人のオリンピアンに、新たな7名が加わる形だが、その中には3×3で東京オリンピック2020に出場した馬瓜ステファニーや山本麻衣、東京オリンピック2020の最終予選でロスター入りしていた宮下希保らがいる。
若い布陣ではあるが、国際レベルの大会をいくらか経験しているメンバーである。
彼女たちがアジアカップを、経験豊富な選手たち抜きで戦うことで、より実戦的な経験を積むことができる。
目下4連覇中のアジアカップで、5連覇を望むファンも多いだろうが ── もちろん彼女たちの目標はそこにある ── 、たとえ結果が伴わなくとも、最低限の「ベスト4」を勝ち取れば、2月のワールドカップ予選に進むことができる。
もし、万が一にも、その「ベスト4」さえ勝ち取れなければ、オリンピックで火がつきかけた女子バスケット人気に多少の陰りも生まれるかもしれない。
しかし、そこで陰りが来るような人気であれば、所詮はバブルである。
遅かれ早かれ消える運命だったというだけだ。
それよりも「負けた」という経験が彼女たちを強くし、さらには女子日本代表をさらにステップアップさせる大きな財産になる。
もちろん負けてもいいとは思っていない。
むしろ負けてはいけない。
戦う以上は5連覇を目指すのが日本代表である。
1965年から始まったアジアカップ(旧アジア選手権)では、4連覇をしたチームはあるが(韓国、中国、そして日本)、5連覇を達成したチームはない。
ならばアジア史上初の5連覇を日本が勝ち取ろう。
渡嘉敷がいない。
髙田もいない。
町田、宮澤、長岡萌映子、本橋菜子、三好南穂、馬瓜エブリンもいない。
トム・ホーバスヘッドコーチだっていない。
アジアカップの指揮を執るのは恩塚亨ヘッドコーチである。
「何をやっているんですか~?」
「やることやって!」
オリンピックで聞いたあの叱咤の声は聞こえないが、女子日本代表を新たなステージに引き上げようとする「恩塚ジャパン」の挑戦を、心から応援したい!
文 三上太
写真提供 日本バスケットボール協会