アジアカップでハードなコンタクトをしていたディフェンスも、キャンベージらオーストラリアのビッグマンに対して貫いた。
いいポジションでボールをもらわせないよう、オフボールのときから体を当てて、少しずつ外へと追いやった。
「ただキャンベージは、中国のセンターや(同じオーストラリアのカイラ・)ジョージと違って、体の幅が広くて、彼女の腕が自分の顔や肩のあたりに当たるんですよね。それをどう攻略するかを考えたい。でも手応えがないわけじゃないので、たぶん次はもっと上手に守れるんじゃないかと思います……でも痛かった」
一足飛びに世界基準に達せられるわけではない。
足りないものはひとつひとつ積み上げていくだけだ。
ディフェンスではまず自分が体を張って、世界屈指のビッグマンを追いやっていく。
それでもいいポジションを取られたら、すかさず「助けて!」と声を上げる。チームで守ることで日本の弱点を抑えていくしかない。
このあたりが、渡嘉敷が逞しくなっていると感じるところの1つだ。
1人ですべてを何とかしようとするのではなく、助けてもらうところは自ら「助けて!」と言える。
立派な状況判断である。
日本国内では誰も止められない渡嘉敷だが、世界に出れば、身長もさることながら、プレーの質でも彼女の上を行く選手はたくさんいる。
昨年度のワールドカップをケガのため参戦できなかった渡嘉敷だからこそ、今再び世界との本気の戦いを渇望している。
キャンベージとの対戦を心待ちにしていた渡嘉敷は、結果として7得点・3リバウンドに終わった。
しかし結果以上のものを得られたと実感している。
「この大会に出てよかったです。特に今日の試合が自分にとってよかったのかなって。もちろん勝つことも大事ですけど、キャンベージとやりあえるのはいい経験になったなって思います。同じ年ですしね。負けられないんですけど、向こうもちょっとは意識してるんじゃないですかね。頑張ります」
次にキャンベージと対戦する可能性があるのは東京オリンピックだ。
そこではもう「経験のため」などとは言っていられない。
一定の結果も求められる。
そのためには12月から再開されるWリーグでの戦い方が、渡嘉敷個人にとっても重要になってくる。
「相手が誰であれ(3ポイントシュートを含めた)シュートを打っていくことが大事だなと思うので、リーグ戦でも前が空いたら思い切って打っていきたいと思います。JX-ENEOSサンフラワーズが勝つことももちろん大事ですけど、世界を見据えて……2月のOQTに向けて、どう勝つかを考えながら、あと3か月をやっていかなければいけないと思います」
以前に比べて格段に逞しくなった渡嘉敷だが、まだまだその余白は大きい。
もっともっと逞しくなって、今度はたとえキャンベージが上から降ってこようとも、冷静にフェイクでかわして、シュートを決めてほしい。
そして「ふん、どんなもんだい」くらいの表情をキャンベージにぶつけて、ディフェンスに戻ってほしい。
それでこそ日本の大黒柱、渡嘉敷来夢である。
文・写真 三上太