その“プレOQT”の初戦、日本はインドを120-29で下した。その試合で吉田亜沙美が2年ぶりに日本代表へ復帰した。格下のインドが相手とはいえ、ベンチスタート、16分の出場で11アシスト。チームのアシスト総数が42本だから(これも驚くべき数字だ)、約4分の1が吉田のそれということになる。
女子日本代表にとってはこれほど頼りになる選手の復帰はない。一方でチーム内の、しかも同じポジションを争う選手にとっては危機感を募らせるのに十分な復帰戦でもあった。
試合後、国際大会の舞台に戻ってきた感想を聞くと、彼女はこう答えた。
「日本のユニフォームを着て試合をするのも本当に久々だったので、そういった重みや自覚、責任を持ってやらなければいけないなかで、私はまだトライアウトの身だからこそ、自分のプレーを出し切らなければいけませんでした。ただ練習がすごくきつかったので、試合をやっているほうが楽でした。なんかまだ実感がないというか、相手がインドだったからかもしれないですけど、これからチャイニーズ・タイペイとオーストラリアと対戦したときにいかに自分の力を出せるか。不安のほうが大きいですけど、やっていかなければいけないことだし、2月の(OQTの)前に11月の段階で国際大会を経験できたってことは、私にとってはすごく大きな経験だったかなと思います」
ワールドカップに2度、オリンピックにも1度出場したことのある経験豊富な吉田であっても、国際大会を戦ううえでの緊張感や不安はぬぐいされないものらしい。それが6カ月の“空白期間”を挟んでのことであれば、なおさらだろう。
実際、体力的にもかなり苦しかったと認めている。クォーターの残り5分くらいからコートに立っていた吉田だが、3分を過ぎたあたりで「まだ2分もあるの?」と感じていたそうだ。
それでもチームメイトの得点を引き出すアシストを量産し、さらに第1クォーター、第2クォーターの最後の得点はいずれも吉田が狙いにいった。第1クォーターのドライブは決まったものの、先に終了のブザーが鳴ったために認められなかったが、第2クォーターでは2秒を残して3ポイントシュートを沈めている。体力的に厳しいと認める時間帯での得点に吉田はこう言っている。
「いや、もう(自分も生き残りをかけて)アピールしていかなければいけないから。私にパスがあることはトムもわかっているし、あとは得点力の部分。レイアップに行けるか、あとは3ポイントシュートの確率をどれだけ上げて打てるか。打つ本数が少ない分、確率を上げていくことが今の課題だと思っています。行けるときは行くと決めていたので、今日は得点とアシストがまんべんなくできたんじゃないかと思います」