8月31日の上海入りからぐずついた天気が続いていた。
日本の初戦であるトルコ戦の当日も雨。次の日も朝からずっと雨。
上海の街は道は広いが、急激な発展でインフラが十分整備されていないのか水溜りも多く、サンダルではなかなか足元も覚束ない。
コーヒーを買いに出かけたデリの主人は、客足がなく暇すぎてレジの向こうで大きな口を開けて惰眠を貪っていた。
コーヒーを持っていくと起き上がり、大げさなジェスチャーで「これだけ雨が降ったら商売上がったりだよ!」と訴えていたが(たぶん)、通りすがりの日本人旅行者にはどうしようもない。
いや、この店が暇なのは雨のせいではなく、場所が悪すぎるんじゃないのかと思ったが、中国語を全く解さない私にはそんなことは言い返しようがないのだった。
この雨は一体誰が連れてきたのかとメディアの方々と言い合っていたが、何のことはない、そもそもこの時期の上海は雨が多いのだということだった。
天気予報を見ると、予選ファーストラウンドが行われるこの一週間はずっと雨なのだった。
そんな雨の上海に一瞬とはいえ久しぶりの晴れ間がのぞいた9月3日。
日本が挑むワールドカップ運命の第二戦、日本対チェコのゲームデイだ。
選手の顔も今日の晴れ間と同じく、晴れやかにリラックスしているかと思いきや、そうでもない。
皆一様に適度に緊張した、張り詰めたような表情をしている。
だがこれは身体が強張って思うように動けない、良くない種類の緊張ではあるまい。
程よい緊張が極限まで集中力を高め、最大のパフォーマンスを発揮できる状態。言ってみればいい緊張状態だろう。
トルコ戦の前は、リラックスすればいいというもんじゃないだろう、と素人考えで感じていた。
今日のような気合いの張り詰めた、とでもいうような選手の表情こそ、重要なゲームには相応しいんじゃないだろうか。