その第1クォーター残り3分31秒からコートに立った馬場雄大も、彼の持ち味であるアグレッシブなアタックを、その時間で見せることができなかった。いつもの彼であれば、序盤の流れを見て、チームメイトが「ゴールにアタックできていないな」と思えば、果敢にアタックしたはずである。しかしそれができなかった。
「ピック(スクリーンプレー)に対してトルコがうまくスイッチをしてきたり、このレベルのサイズはあまり体感したことがなかったので、そういうところで僕も気持ちが引いていたのかもしれません」
いきなり世界の壁をまざまざと見せられてしまったわけである。
それでも光明がなかったわけではない。
第2クォーター以降の馬場は持ち前のアグレッシブさを取り戻したし、第3クォーターに比江島慎のファウルトラブルでコートに立った安藤周人は7分51秒の出場時間で3本の3ポイントシュートを放っている。結果はともに喜べるものではなかったが、それでもスラッシャーとして、またシューターとして世界に踏み出す「はじめの一歩」は経験したと言っていい。
アンダーカテゴリーも含めて、これほどまでの大きな国際大会に出たことがない安藤はトルコ戦をこう振り返っている。
「日本でやるより一つひとつのプレーの質だったり、少しでも気を抜いたらやられたりしていたので、本当にワクワクしながらプレーをさせてもらいました。今日の自分のプレーは本当に散々でしたけど、まだ予選は2試合あるので次につなげていきたいと思います」
まさかこんなゲームの入り方になるとは、世界的名将も思わなかったのだろう。初の世界大会に挑む若者たちも、さまざまな点で計り知れないところを多く痛感しただろう。しかしワールドカップはこの1試合で終わりではない。そう考えるとやはりファジーカスや青木氏が例のフレーズを使いたくなるのもわかる気がする。
やっぱり今日は「ようこそワールドカップへ」なのである。
文 三上太
写真 安井麻実