※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2017年3月末発行vol.7からの転載
2014年から2016年までヘッドコーチとして男子日本代表を率いた長谷川健志氏。2014年アジア競技大会では20年ぶりに銅メダル獲得。2015年アジア選手権では18年ぶりにベスト4進出を果たした。1998年の世界選手権以来となる世界への切符を勝ち獲り、2016年にはFIBAオリンピック世界最終予選に出場。確固たるフィロソフィーを掲げ、選手たちにリーダーシップを持たせたことでチームワークが向上し、歴史を切り拓く結果につながっていった。日本代表をワンランク引き上げた長谷川氏のリーダー論を紐解いていただこう。
── どのようなことを求めて選手たちにリーダーシップを説いていたのでしょうか?
日本代表は活動期間が限られているので、目標設定や理想像を共通認識させる必要がありました。それはどんな組織でも同じことであり、掲げた目標に対してみんなが同じ熱量で向かっていかなければ成果は得られないと思います。日本代表は大人のチームではあるが、まだまだリーダーシップが足りないと感じました。日本人のような農耕民族にはコツコツやるタイプが多く、規則を作ってマネジメントをすればその分、成果も挙げられると思います。一方でこちらから仕向けていかないとリーダーシップを発揮することが難しいという側面もありました。リーダーシップはコミュニケーション能力とも関係してきます。また、成果が見えづらい部分もあります。でも、もっとシンプルに考えれば、世の中で生きていく上で普段からリーダーシップを誰もが発揮しているはずです。それをもう少し発展させれば良いだけで、あまり難しく考えずにやっていければ良いと思います。2年目から、田臥(勇太)というベテラン選手がチームに加わってくれたこともすごく大きかったです。
── チームワークが良かったのもリーダーシップが要因にあるのでしょうか?
リーダーシップがないチームは信頼関係が生まれません。本当に困った時に何が必要であり、どうすれば良いかをみんなで考え、意見を出し合って1つの解決策に向かっていく。それができなければ一向に変わらず、勝敗にも影響してしまいます。チームのためを思った発言ならば、より良い行動に移してくれます。チーム結成当初に「私自身が好きではないので規則は作らない。だからこそ規律だ」と話しました。各々が考えたモラルが規律になっていけば、規則で縛る必要はありません。チームのために考えて行動に移すことが全てリーダーシップにつながります。