── 加えて、日本は男女そろってオリンピック出場を決めました。北原さん曰く『オリンピックに出ないとわからないことがある』のですからこれはチャンスですね。
チャンスですよ。これまで日本はリバウンドが課題と言われ続けてきましたし、今でもそれは変わらないですけど、日本代表のワールドカップ予選を見ればわかるように4連敗したチームにニック・ファジーカス、八村君、渡邊君の3人が入ってきただけでペイント内で苦労していた日本の印象が大きく変わりました。あのオーストラリア戦ですらアドバンテージを取ることができたんです。
── 確実に強くなったという印象がありますね。
強くなりました。ヘッドコーチのフリオ・ラマスさんは選手を使うことが非常に上手い典型的な代表チームのコーチです。日本代表は練習期間が短いから、少ない時間の中でいかに集中して練習するか、そして、その成果を試合に出せるかかが重要になります。そうすると、選手それぞれが持つ能力を見極め、それを生かすためにどう組み合わせるかがコーチの腕の見せどころになるわけです。その点、ラマスさんはあの短い期間で選手の特徴をよーくつかんで起用しているのがわかりますね。メンバーチェンジの仕方とか抜群に上手いですよ。選手たちもまた自分が活かされていることがわかっているから、そのシステムにフィットすることで活躍できる。たとえばオーストラリア戦でやったあのゾーンとかね。正直、まともに戦ったら勝つのは難しい相手。そこであのゾーンを使って守りで攻めにいったわけです。選手たちもそれによく応えていました。最後は渡邊君、八村君がいないチームで勝てたのも選手たちが自信をつけて成長できた証拠でしょう。
── 最後はアウェーでの戦いもきっちり勝ちました。
そうそう、それも半分がアウェーで戦うBリーグのいい意味での影響じゃないかと思っています。古くて恐縮ですけど、アマチュアスポーツであり学校教育の一環として部活をやり、企業チームに守られてプレーしていた僕たちの時代はたまにアウェーでブーイングされたりすると結構ビビッたものです(笑)。そのへんもたくましくなりましたね。まあいろいろ言いましたけど、まとめるとプロリーグができたこと、渡邊くんや八村君のように海外で活躍する選手が出てきたこと、また、それが刺激となって海外に挑戦しようという選手が増える兆しがあること、代表にラマスさんという名コーチが来たことで選手たちの意識が変わってきたこと、それらを含めると日本のバスケットは世界基準にちょっとだけ近づいたんじゃないかということです。もちろん、まだまだですが、これは間違いなく明るい光じゃないですか。