昨日まで目立たなかった選手が一夜にして脚光を浴びる。それが女子選手であれば「シンデレラガール」などと呼ばれるが(今となってはアイドルグループが歌う楽曲のタイトルとしてのほうが有名かもしれない)、2019年度のバスケットボール女子日本代表であれば、林咲希がそれに当たる。
茨城・水戸でおこなわれた「バスケットボール女子日本代表国際強化試合2019 三井不動産カップ」の初戦、林は5本の3ポイントシュートを含む19得点をあげている。第2戦も同じく5本の3ポイントシュートを含む17得点をあげ、ワールドカップ4位のベルギーを連勝で下す立役者となった。ともにチーム最多得点である。
「東京オリンピックで金メダルを獲る」ことを目標にしている女子日本代表にとって、3ポイントシュートはオフェンスの生命線である。試合後、林のもとに多くのマスコミが殺到したのも無理のない話である。
しかし林本人も認めるとおり、彼女が2試合で放った17本の3ポイントシュートは彼女ひとりの力で成し得たものではない。もちろん決めたのは林本人の実力であり、彼女の努力の成果であることは間違いない。それでもシューターとして警戒されながら──さすがに立て続けに数本決めれば、知らない選手であっても相手チームは警戒レベルを上げるはずだ──シュートが打てたのは、チームメイトのサポートがあったからである。それを見逃すわけにはいかない。
たとえばスクリーナー。
林のシュートを警戒する彼女のディフェンスをよいポジションに立たせないために、裏を返せば林に少しでも楽にシュートを打たせるために“壁”となって、ディフェンスの行く手を阻むスクリーナー。スタッツにはけっして残らないそのプレーで貢献した一人が谷村里佳である。
茨城県出身の谷村はシャンソン化粧品シャンソンⅤマジックに所属する185センチのパワーフォワード。1993年生まれというから、長岡萌映子や宮澤夕貴、藤岡麻菜美と同級生で、中村学園女子から筑波大学に進学し、シャンソン化粧品に入って今年で4年目となる。
Wリーグの2018-2019シーズン、シャンソン化粧品の2年目から取り組んできたという3ポイントシュートの精度を飛躍的に上げたことで「ストレッチフォー」としての存在感を増すことに成功。サイズなど身体能力で世界に劣る日本にとって、180センチ以上で3ポイントシュートが打てる選手はもはや必須である。それが谷村を女子日本代表に初選出させた一番大きな要因だろう。