こじ開けた世界の扉の向こうで、もう1つ上の景色を見たい
21年ぶりの快挙とあって、祝福ムードに包まれる会見でラマスヘッドコーチは次のようにスピーチした。「4連敗したときも我慢して、耐えぬいて、我々のプレースタイルを構築していったことが今回の結果につながったと思います。本当に選手たちには感謝している。私にとって何よりもどんなものよりも大事なチームです」
また、『今回の代表はあなたにとってどんなチームですか?』という選手全員への質問には「コートの中でも外でも日本一丸になれたチーム」(太田敦也・三遠ネオフェニックス)、「優しい先輩が揃い、先生と生徒みたいにいろいろなアドバイスをもらっている」(張本天傑・ダイヤモンドドルフィンズ名古屋)、「全員がチームのために自分のエゴだったりいろいろなものを犠牲にできる。尊敬できる人間の集まりだと思う」(田中大貴・アルバルク東京)などさまざまな答えが返されたが、その中で笑いを誘ったのは「(メンバーは)大事なときに集まる親戚の、一言で言えばいとこみたいな感じ」と答えた辻直人(川崎ブレイブサンダース)だ。辻は会見後に開かれた祝勝会でも「イチ、ニノ、サン、俺たち…いとこォ~!」と、乾杯の音頭を取り会場を沸かせた。日常をともにする家族ほど濃密ではないが、大事なときは必ず顔を合わせる欠くことのできない存在。『いとこ』は今後しばらく代表チームのキーワードになるかもしれない。
「1年前は8連勝することもこの場に座っていることも想像できなかった。自分たちに対して自信もなかった」と、4連敗した当初の心境を吐露したのは竹内譲次(アルバルク東京)だ。「ただ今は違う」と続ける。「今は全員がこのチームに自信を持っているし、何より僕だけじゃなく、みんながこのチームでプレーすることが大好きだと思います」。長きに渡って日の丸を身に付け、いくつもの“日本代表”を経験してきたベテラン。その言葉は34歳にして成長し続けるコート上の竹内と重なるものだった。
キャプテンの篠山は自力でこじ開けた世界への扉を「日本の夜明け」と表現した。だが、浮かれてはいない。日本がさらに山を登り、違った景色を見るためにも「これはゴールではなく出発点だと思っています」――
中国で開催されるワールドカップの組み合わせは3月16日の抽選により決定し、第1次ラウンド(8月31日~9月5日)、第2ラウンド(9月6日~9月9日)、決勝ラウンド(9月10日~9月15日)のスケジュールで行われる。大黒柱のファジーカスは言う。「成長したチームに次は塁や雄太が加わる。それはワールドカップで勝つ可能性が生まれるということ。僕たちは世界を驚かせるよ」。その一言が決して夢物語に聞こえないことが素直に嬉しい記者会見だった。
文 松原貴実
写真 安井麻実