A代表のスタメンポイントガードの座を争うのは町田以外に3人いる。昨年のアジアカップでブレイクした藤岡麻菜美、昨年こそ代表から漏れたもののリオデジャネイロ五輪に出場した三好南穂、そして今年度が代表候補初選出となる本橋菜子だ。
それぞれに特長の異なるポイントガードだが、町田は自身が最も得意とし、日本代表チームも標榜するトランジションバスケット、つまり攻守の切り替えが速いなかで攻撃の起点になりうる存在だ。
むろんトランジションだけで40分を戦えるわけではない。昨年以上に早い段階から数が増えているハーフコートでのセットプレーの選択もポイントガードに求められるスキルだ。
「昨年までは2番手のポイントガードとして『もっとペースを上げてこい』と言われるだけだったので、それだけを意識してやっていたんです。でもスタメンで出るとなれば、それだけでは通用しない。トランジションで行くのか、ハーフコートで1本をしっかり作るのか。そのバランスがすごく大事になってくるかなと思っています」
2015年以降、A代表に定着しつつある町田だが、同じポイントガードであってもスタメンとバックアップとでは役割が異なる。ゲーム作りを40分という大きな視点で考えなければいけないし、ゲームの状況において、その判断を変える必要性も出てくる。第4次合宿中に来日し、非公開で行われているベラルーシ代表との練習ゲームも第1戦は大差で勝ったために取り組めなかったが、競った状況ではどう判断するべきかなどがその例だ。プッシュすることを第一と考えていた昨年までとは思考をまったく切り替えて、町田は今年の日本代表合宿に臨んでいる。
もちろん課題はそれだけでもない。
今年もホーバスから指摘を受けたそうだが、例年のように町田は得点力を問われている。
「トムさんからは(ポイントガードが)1試合で10得点・7〜8アシストできたら日本は強いと言われたので、そこは自分でも意識してやらなきゃいけないと思っています」
それは今年のチームから吉田、大崎が抜けたことでより強く意識している部分でもある。
「リュウさん、メイ(大崎)さんがいない状況で、チームを今まで以上のレベルにするためには、ポイントガードの得点は必要。『リュウと同じプレーをしていてもダメだよ』とも言われたので、そこはさらに強く意識しなきゃいけないと思っています」
ことポイントガードだけにフォーカスすれば、吉田が抜けた穴はけっして小さくない。しかしその穴を埋める選手が一人でも多く出てくれば、吉田が帰ってきたときの相乗効果は計り知れない。町田は得点力をあげることで、それに挑戦しようとしている。
藤岡がケガの影響で少し出遅れているが、それさえもチャンスに捉えて、一気に突き放すことができるか。それくらいの荒々しいまでの気概を持つことができれば、吉田や藤岡が戻ってきたときに彼女の思い描いていた「日本のスタメンポイントガードになる」という目標も達成できるというものだ。万が一にもバックアップへ戻されたとしても、そこに昨年までの町田の姿はない。
もうバックアップじゃない――今年の日本代表を自分が「また成長できるチャンス」と認める町田のステップアップこそが、日本を世界のより高いところへと導く。
文・写真 三上太