「今回いきなりリュウさんがいないのを聞いて、最初は不安もありました」
女子日本代表の第4次合宿が始まっている。
4月のスタート当初は52名いた代表候補選手も29名にまで絞られた。さらに今回からワールドカップ(9月22日〜30日@スペイン・テネリフェ)に出場する、いわゆるA代表と、アジア競技大会(8月19日〜9月1日@インドネシア・ジャカルタ)に出場するB代表とに分かれて、それぞれ強化を進めている。
そのA代表のなかに「リュウ」こと吉田亜沙美と、大崎佑圭の名前がない。練習後、ヘッドコーチのトム・ホーバスは2人がワールドカップに出ないことを明言し、その理由について「いろいろあるけど、やはりコンディションが足りなかった」と言う。大会の日程を考えれば、額面通りに受け取るわけにはいかない。つまり体力的なコンディションだけが理由であれば、経験豊富な選手であるだけに9月下旬にピークを合わせることもできたはずだ。ホーバスの言う「コンディション」には長年の勤続疲労や、メンタル的なものも含まれていると考えていい。
毎年、Wリーグと日本代表を掛け持ちし、しかもともにチームの主力で戦っている彼女たちにとって、多少の休息は不可欠だった。本誌最新号(21号)で大神雄子と対談した萩原美樹子が言っていたように、オリンピックという大舞台で戦った後に高いモチベーションを維持し続けることは、いかにトップアスリートといえども難しい。ましてや彼女たちは、そうした厳しい状態のなかでWリーグ10連覇という偉業にも挑戦し、実際に達成している。世界の舞台で彼女たちの姿が見られないのは寂しいが、これも2020年に向けての必要な一歩と考えれば、今はゆっくり休んで、英気を養ってほしい。(その後、大崎は所属チームを通して、「今シーズンはWリーグにも選手登録をしないこと」、「新しい生命を授かったこと」を発表。後者について、まずはおめでとうございます!)
その一方で、ホーバスはNBA2017-2018シーズンのイースタンカンファレンス・ファイナルまで勝ち進み、そこでクリーブランド・キャバリアーズに敗れたボストン・セルティックスを引き合いに出して、こうも言っている。
「“Plug-and-Play(プラグ・アンド・プレー)”……今シーズンのセルティックスはいろんなケガ人が出たけど、ベンチからメンバーが出てきて、(ケガした)そのポジションに入った。それをアメリカのメディアは“Plug-and-Play(プラグ・アンド・プレー)”と言ったけど、誰かが次のポジションに入っていく、そういうシステムをボクたちも昨年から作っている。それをもっともっと高めていきたい。もし誰かがケガをしたら、次は誰かがそこに入っていく。でも自分たちのバスケットのレベルは変わらない。そんなシステムをね」
昨年は渡嘉敷来夢抜きでアジアカップを制した。今年は吉田と大崎抜きで世界と戦い、目標であるメダルを獲得してやろう。女子日本代表は本気で世界レベルのチーム作り、体制作りに取り組み、世界の頂点を目指している。
さて冒頭の言葉は、激化するポイントガード争いの中にいる町田瑠唯の言葉だ。むろん言葉は「不安」だけで終わらない。
「でもリュウさんがいないのはどうしようもないし、いつかは世代交代があるわけだから、それが(イメージしていたよりも)少し早く来たかなという感じです」
前向きというよりも、アスリートなら誰もが持つ負けず嫌いの炎に、さらなる油が注がれたようだ。ピンチをチャンスと捉えたわけである。