43年ぶりのアジアの頂点はあまりにも美しい光景だった――。
女子バスケのアジア選手権最終日、日本は宿敵・韓国を【65-43】で破り、1970年以来のアジア選手権優勝を果たした。8日で7試合という厳しい日程にも関わらず、一度も負けることなく決めた「完全優勝」である。
「今大会は一度も負けなかった…これは本当にすごいことだと思う」
内海知秀ヘッドコーチも、自分が作り上げたチームであるにもかかわらず、その強さに驚きを隠せないほどだ。
最大の勝因はインサイド陣の充実である。渡嘉敷来夢と間宮佑圭は日本の枠を飛び越え、アジアを代表するセンター陣に名を連ねたし(ガードの吉田亜沙美とともに3人が大会ベスト5に選出された。渡嘉敷は大会MVPも獲得)、バックアップの王朝新喜、宮澤夕貴もけっしてアジアのインサイド陣に引けをとらない働きをしていた。こうしたインサイドに核を持ったチームはけっして大きく崩れることがなく、常に試合を優位に進めることができる。
しかしインサイドだけで勝てたのかといえば、そうではない。今大会の日本は、昨日のコラムで吉田が言っていたように「チーム力」がいつにも増して強かった。ベンチの誰もがチームを支え、その支えをしっかりと受けて、コート上の5人がそれぞれの役割を徹する。ガードはゲームをコントロールし、シューターはシュートを沈める。ディフェンスで体を張る選手もいたし、チームリーダーはいるだけでその存在感をはっきりと示していた。そうしたチームだからこそ、日を追うごとに強さを増していった。成長が手に取るようにわかる中高生のように、この大会期間中に進化を遂げていったのである。内海ヘッドコーチも「このチームは勝つことで成長していった」と認めている。
「負けて、それを反省して成長することももちろんすごく大事なことなんだけど、やはりそのあとで勝たなければ真の成長はありません」
内海ヘッドコーチのその言葉に、ヘッドコーチ自身の充実感も感じ取ることができる。
同時達成することは難しいと思われていた「成長と勝利」を同時に手にしたわけだが、しかしこの優勝は世界に向けたステップに過ぎない。女子日本代表が掲げる現時点での最大の目標はリオデジャネイロ五輪に出場し、世界と伍する戦いをすることだ。そのためにはまだまだプレイの精度を上げていかなければならない。来年おこなわれる世界選手権もそのための試金石にしていくつもりだ。
43年ぶりのアジアの頂点は美しかった――でも、彼女たちはもっと美しい光景を見るべく、11月8日から国内リーグをスタートさせる。
女子日本代表のアジア選手権・予選ラウンド対戦スケジュール
10月27日(日)日本 94-59 カザフスタン
10月28日(月)日本 69-57 チャイニーズ・タイペイ
10月29日(火)日本 78(OT)71 韓国
10月30日(水)日本 81-40 対インド
10月31日(木)日本 62-55 中国
11月2日(土)準決勝 日本 74-56 チャイニーズ・タイペイ
11月3日(日)決勝 日本 65-43 韓国
JBA:第25回FIBA ASIA女子バスケットボール選手権大会特設サイト
文・三上太