入学後はレベルが段違いに高い先輩たちのプレーに驚きながらも「ただただガムシャラに練習しました。練習も試合も本当に無我夢中でした」
自ら切り拓いた場所で、ただただガムシャラに…いわば、それが古川のスタート地点だった。
しかし、それから9年、古川は危機感だけが募った昨年の代表活動を経て、自分に足りないものを模索していた。
「そのとき気づいたのは自分のメンタルの弱さだったんです」
アグレッシブにゴールを目指しているつもりなのに、肝心なところで引いてしまう。バスケットを学び、バスケットを知った分、ガムシャラで怖いもの知らずだった『かつての自分』が、ふっと弱気になってしまうことがある。
「それに気づいたのが昨シーズンのリーグ後半戦あたり。もともと俺が、俺が、というタイプではないんですが、戦う以上それもまた必要なのだと気づきました。そこから少し変われたと思います。少なくともそれまでより気持ちが前向きになりました」
その結果、リーグ後半からは自分でも納得できるパフォーマンスが増えた。「危機感を持って臨んでいる」と言った今回の(代表)合宿でも「変わった自分が少しは出せている気はします」と、徐々に手応えを感じているようだ。
「10月には28歳になるんです。もう28歳ですよ(笑)」若手のくくりから外れた分、経験を積み、経験が重なった分、プレーに深みが増す年齢。
「そうですね。だからこそ自分らしさを追求して、もっとチームに貢献できる選手になりたいと思っています」
男子日本代表の第4次合宿は現在中国で行われており、続く第5次合宿はヨーロッパ遠征が予定されている。古川はいずれも合宿メンバーに選ばれ、参加したAtlas challenge(7月27日~8月1日@中国・蘇州で開催)予選ラウンドでは、第1戦(対リトアニア)で15得点、第3戦(対オーストラリア戦)で23得点とチームハイをマークした。残念ながら勝ち星は得られず、試合の詳細もわからないが、それでもこの得点からアグレッシブにゴールに向かう古川の姿が伝わってくるような気がする。中国に旅立つ前の合宿で「とにかくアタックしてきます。引かずにぶつかっていきます」と、きっぱり言い切った力強いことばを思い出した。
文 松原貴実