WJBL 2010-2011シーズンを最後に廃部となったJALラビッツ。その後、チームを受け継ぐ形で新潟に新たなラビッツが誕生した。
ファーストシーズンのロスターはたった8人。練習中にゲームができない人数での離陸は、視界良好とは言えない。2リーグ制最後の年であり入替戦へ回る心配こそなかったが、最下位は免れたいのはどのチームも同じ。ケガ人が出たり、ファウルアウトをすれば、さらに人数が減ってしまう不安を抱えたままの戦いを強いられたが、なんとか28試合をチーム一丸となって駆け抜けた。アイシンAW、三菱電機にそれぞれ4回戦中2勝を挙げ、4勝24敗。記念すべき第一歩は、8チーム中7位であった。
2シーズン目、JAL廃部とともに引退していた当時のキャプテン岩村裕美が復帰し、ロスターも12人に増加。12チームの1リーグ制が導入された昨シーズン。レギュラーシーズンで上位8チームに入らなければ、年を越せずにWJBLのシーズンが終了してしまうレギュレーション(※今シーズンは変更され、レギュラーシーズンは3月末まで。上位4チームがプレイオフ進出)。JALから譲渡されたこのチームは自主運営を行う、言わばプロチーム。それゆえに試合数を増やさねば、チーム運営にも大きな打撃となる。12月までの戦績は10勝12敗、6位でプレイオフ ファーストラウンド進出。オールジャパン後も続けて試合ができる権利を得た。セミファイナルには進めなかったが、1年目よりひとつ順位を挙げて6位となった。
そして今シーズン、3年目を迎えた新潟アルビレックスBBラビッツ。
新年早々、一つの壁を乗り越えることができた。これまで2度のオールジャパンは、シード枠を確保し3回戦から登場していながら、いずれも初戦敗退。3度目の正直となった今年の相手は大阪体育大学。トップリーグのチームとしては褒められるような内容では無かったが、78-72で勝利し、悲願の初戦突破を成し遂げた。
歩幅は狭いかもしれないが、着実に成長している姿を見せている。
チームとともに3年目を迎えた近藤 紗奈の大きな変化
チーム発足となった2011年に入団し、チームとともにWJBL3年目を迎えた#53 近藤 紗奈。人数が少なかったこともあるが、ルーキーシーズンから先発を任されてきた。オールジャパン後に再開された1月18日(土)の羽田ヴィッキーズ戦は、40分間フル出場。今シーズンこれまで、チームの中でも一番長い出場時間を与えられ、チームとともに成長している。そんな近藤は今シーズン、大きな変化があった。
「1年目、2年目は3Pシュートを決めたことがなく、そもそもさほど打ってもいませんでした」
過去2シーズンの3Pシュートはトータルして、0/15本。
「でも今シーズンは、チーム自体のバスケットが変わったことで自分の得点チャンスも変わり、オフシーズンに3Pシュートを練習して来たことが少しずつ試合でも出せるようになってきています。それが一番分かりやすいオフェンス面での変わった点です。これまでは3Pシュートを打つ自信も決める自信も無かったですが、今シーズンはしっかり自分のタイミングでシュートが打てれば、結果につながることを少しずつですが実感しているので、積極的に『打てる時には打とう』と意識しています」
この日も2本沈め、今シーズンはすでに17/41本。41.5%の高い成功率はWJBL全体でも7位タイ(いずれも1月19日現在)。
新潟では178cmの#3石川 真衣選手に次いで、2番目の高身長となる177cmの近藤。学生時代からチームで1、2を争う大きな選手だったために、仕事はペイントエリアの中ばかり。しかし、3年目の大きな改革としてオフェンスエリアを拡大し、結果を残し始めている。
けして大きくはない新潟にとって、近藤のサイズはインサイドでも生かさねばならない。
「インサイドが薄いのは今シーズンに始まったことではないですし、ディフェンスではチームディフェンスをずっとやって来ています。私のマークマンは180cm台や190cmが基本なのでやられることもありますが、少しでもボールをもらう時に外側でもらわせるようにするとか、リバウンドも自分が獲れなくても、相手に獲らせないとか、地味な…と言うか目立つことよりも小さいことをしっかりやろうと思っています」
身長高く有望な選手は、高校卒業後にWJBLに来てしまうことが多い。鹿屋体育大学からWJBL入りした近藤にとって、その身長差にも手こずってきたが、この3年間で対応力も身についてきた。
「当たり負けはそこまでしていないとは思っています。でも、どうしても高さや幅で負けてしまう。大きい選手は外側でプレイするのは苦手だと思うし、リバウンドでも外から飛び込まれるのもイヤなんだろうな、というのはこれまでの対戦で感じてきました。相手の得意なところで競り合っても難しい部分はあるので、違うところで勝負しようと考えるようになりました。それが今年、アウトサイドでのプレイをチャレンジすることになったわけです」
環境の違いを乗り越えるハングリーさ
自主運営となるプロチームではあるが、平日は仕事をしている選手たち。
「午前9時から午後3時まで仕事をして、その後夕方から練習です。オフシーズンは月〜金で働いていますが、今のようなシーズン中は火〜木だけ就業しています。チームのスポンサーをしていただいている企業で働いていますが、選手それぞれ会社はバラバラです」
この話を伺った後日、「トヨタバスケットボールアカデミー」に参加し、ゲストスピーカーのJX-ENEOSサンフラワーズ トム・ホーバス アシスタントコーチから練習時間が紹介され、環境の違いが明確となった。JX-ENEOSでは朝6:30からシューティング。午前中と午後に各2時間の2部練習。さらに午後の練習前には1時間の個人練習があり、夕食を終えた19:30からシューティングやトレーニングが待っている。専用体育館があり、バスケットに専念できる環境が、新潟とは大きく違っていた。
「正直なところ、練習時間も違いますし専用体育館も無いです。少しずつ良くなってきていますが、3年目はまだこれからかな、というような環境です。でも、仕事をすることでバスケット以外に学べることも大きいですし、社会人としての生活はすごく大切です。何よりも自分の身になっています。練習時間は短いですが、質を上げればもっと上に行けると思います。環境が良くなればさらに良いのかもしれませんが、今ある環境で上位に行くかどうかは自分たち次第。負けを環境のせいにはしたくないので、今の状況でもチームワークであったり、できることをやっていけば環境の良いチームにも勝てると思うし、勝ちたいという気持ちの方が大きいです」
7位から6位へ順位を上げて来た2シーズン。今シーズンは15試合を終えた時点で6勝9敗、7位。12チーム中6チームが勝率5割をゆうに越えており、真上にいる6位三菱電機コアラーズは10勝5敗とその差は開かれている。Bクラスから抜け出し、プレイオフ進出を目指す後半戦。
「これからはどんどん違うチームと戦って行きます。完璧なチームはないので、相手の隙をついて勝ちたいです」
今週末からの4週間は、土日で相手が変わるスケジュール。入念なスカウティングと対応力が試される。
「もう1つや2つは、上位チームを食いたいと思っています」
“食いたい”相手となる首位JX-ENEOS戦は、早速次戦1月25日(土)にやってくる。ホームの大きな声援を受けながら、ハングリーなウサギたちはさらなる上位を狙いに行く。
- 1月25日(土)18:00 新潟 vs JX-ENEOS@阿賀野市笹神体育館
- 1月26日(日)16:00 新潟 vs 日立ハイテク@阿賀野市笹神体育館
- 2月1日(土)16:00 富士通 vs 新潟@代々木第二体育館
- 2月2日(日)14:00 新潟 vs トヨタ紡織@代々木第二体育館
- 2月8日(土)14:00 アイシンAW vs 新潟@代々木第二体育館
- 2月9日(日)16:00 新潟 vs トヨタ@代々木第二体育館
- 2月15日(土)14:00 デンソー vs 新潟@大田区立大森スポーツセンター
- 2月16日(日)16:00 新潟 vs 三菱電機@練馬区光が丘体育館
泉 誠一