男子2回戦、県立市川(山梨)vs金沢(石川)の一戦は、91-57の大差で金沢が勝利した。前日、能代工業を破った金沢は好調さを維持。この試合が初戦となる県立石川は硬さもあってか自分たちのリズムをつかめないままコートを去ることになった。
この試合、県立市川のベンチから少し離れたエリアで選手たちに声を掛け続けたのが、トレーナーの小松雅子さん。このチームの3年生たちとは入学当時から関わってきた。フィジカル面のコンディショニングだけでなく、よき相談相手としてお姉さん的な立場で面倒を見てきた。
「ルールなので仕方ないのですが、トレーナーがベンチに入れるのはクオォーターごとのインターバルとハーフタイム、あとは突発的なケガなどに限られています。個人的にはできるだけ選手たちの近くにいてサポートをしてあげたい。終盤になって脚がつっている子たちにマッサージをしてあげられれば……」
小松さん自身、かつてはプレイヤーだった。残念ながら、中学の時にケガをしてしまい断念せざるを得なかったのだ。その時、
「人のために何かをして、例えばテーピングをしたり、マッサージをしたりすることで、その選手が頑張れる場所をつくってあげられればいいな、と思ったんです。高校進学の段階でトレーナーになろうと考えていましたね」
高校卒業後、縁があってスポーツメーカーに就職。トレーナーのセクションがあり、次の年から3年間、夜間の専門学校で学び鍼灸とあんまマッサージの資格を取得した。その後、転機があり漠然とUターンと独立を考えるようになった。
「知り合いのトレーナーさん頼んで現場を見学したり、お話を伺ったりして経験を積みました。そろそろ地元(山梨)へ帰ろうと思っていたら、ちょうどお声をかけていただき、山梨でのトレーナー生活がスタート。関わった種目はバスケ、ソフトテニス、バレーボールなど。でもバスケへの思い入れは強いですね(笑)」。
まだまだ未熟で、これからも勉強しなければならないことがいっぱい、と笑う小松さんだが、ベンチにいる選手たちにとっては頼もしい存在だ。何よりも、生徒と一緒に熱くなり、バスケに賭ける熱いハートが伝わってくる。敗戦後のミーティングでは、そっと目頭を拭っていた。
バスケのコートは選手だけが戦っているわけではない。コーチやトレーナー、応援に駆けつけるたくさんの人たちが一緒に戦っている。その熱気が織り成すドラマはいよいよ盛り上がっていく。“できるだけ選手に近い立場で”と情熱を注いでくれるたくさんの人に見守られ、のびのびプレイする高校生プレイヤーたちの活躍に大いに期待しよう。
文・羽上田 昌彦(ハジョウダ マサヒコ)
スポーツ好きの編集屋。バスケ専門誌、JOC機関紙などの編 集に携 わった他、さまざまなジャンルの書籍・雑誌の編集を担当。この頃は「バスケを一歩前へ……」と、うわ言のようにつぶやきながら現場で取材を重ねている。 “みんなでバスケを応援しよう!”を合言葉に、バスケの楽しさ、面白さを伝えようと奮闘中。