今シーズンのJX-ENEOSサンフラワーズは、PG#12吉田選手を欠いて苦しい戦いを強いられた。Wリーグは開幕戦で敗れるなど、レギュラーシーズンは前半戦を終えて10勝2敗。当然、プレイオフ圏内にはいるのだが、これまでのような“圧倒的な強さ”は影を潜めたかのようだった。
当初、復帰は2月頃との噂もあった吉田選手だが、昨年12月20日に復帰した。連覇を狙うオールジャパンに間に合ったが、「(言葉で交わした約束ではないが)プレイタイムは20分ぐらいをメドに」と佐藤清美ヘッドコーチは考えていたと言う。
が、もつれた試合になれば頼らざるを得ない。前日のSEMI FINAL、富士通レッドウェーブ戦は常に先手を取られる展開だった。残り37秒、#10渡嘉敷来夢選手のシュートが決まり、JX-ENEOSが4度目のリードチェンジで1点差とすると、残り9秒で吉田選手がフリースロー。落ち着いて2本とも決めた(72-69)。同点を狙った富士通#15山本千夏選手の3Pシュートが外れ、やっとの思いで決勝へ進出した。
FINALの相手はデンソーアイリス。この試合もJX-ENEOSは先手を取られてしまう。前半を終えて22-24。わずか2点差とは言え、デンソーの選手たちの動きが良かった。特に#13伊集南選手が切れ鋭いプレイを見せ、何度もJX-ENEOSディフェンスをすり抜けてゴールに迫った。
勝負の懸かった後半は出だしからJX-ENEOSがスパート。8連続得点で30-24と逆転し、4分半、デンソーをノーゴールに押さえ込んだ。しかしながら、残り1分からデンソー#13伊集選手が連続3ゴール。39-38とJX-ENEOSが1点をリードして第4Pへ。
このゲームを支配したのは、やはり吉田選手。第4Pが始まって2分経過するまでに2本のジャンプシュートを決めた。この4点は、リズムを掴みかけたチームに“JX-ENEOSらしいハーモニー”をもたらすことに成功したようだ。試合後、
「最後は気持ちの勝負。自分が試合を決めたいと思っていたが、その通りにできた」と言う吉田選手。「みんなが強い気持ちで戦った結果」と言葉を続けた。
その言葉を受けて#21間宮佑圭選手は、
「観ている方は『またJXか……』と思ったかも知れませんが、今シーズンの自分たちはそうではなかった。悪いスタートの中で勝ち取った優勝は大きな意味がある」と振り返った。連覇を続けようと、何回優勝を重ねようと、一度として簡単な優勝などありはしない。
だからこそ、表彰式に臨む選手たちの微笑みは美しく、ファンの心をつかむのだろう。
【女子SEMI FINAL】
JX-ENEOSサンフラワーズ ○72-69● 富士通レッドウェーブ
デンソーアイリス ○75-61● トヨタ自動車アンテロープス
【女子FINAL】
JX-ENEOSサンフラワーズ ○66-53● デンソーアイリス
【女子最終結果】
優 勝:JX-ENEOSサンフラワーズ(2年連続19回目)
準優勝:デンソーアイリス
3 位:富士通レッドウェーブ
3 位:トヨタ自動車アンテロープス
【女子大会BEST5】
渡嘉敷 来夢選手(JX-ENEOSサンフラワーズ#10) ※5年連続5回目
吉田 亜沙美選手(JX-ENEOSサンフラワーズ#12 )※2年連続5回目
髙田 真希選手(デンソーアイリス#8) ※3年ぶり2回目
伊集 南選手(デンソーアイリス#13) ※初受賞
長岡 萌映子選手(富士通レッドウェーブ#0) ※2年ぶり2回目
文・羽上田 昌彦(ハジョウダ マサヒコ)
スポーツ好きの編集屋。バスケ専門誌、JOC機関紙などの編 集に携 わった他、さまざまなジャンルの書籍・雑誌の編集を担当。この頃は「バスケを一歩前へ……」と、うわ言のようにつぶやきながら現場で取材を重ねている。 “みんなでバスケを応援しよう!”を合言葉に、バスケの楽しさ、面白さを伝えようと奮闘中。