社会人にとって、年内に終わらせねばならない節目の行程に追われながらも、お得意様へのご挨拶周りや社内外での忘年会がスケジュールを埋める忙しない日々を送っている方も多いことだろう。年明けにはオールジャパンこと「東日本大震災復興支援 第89回天皇杯・第80回皇后杯 全日本総合バスケットボール選手権大会」が開幕。そのオールジャパンへ出場する社会人ボーラーたちにとっては、仕事や年末イベントとともに、バスケも合わせて時間をうまく作りながら全てをこなさねばならない師走を駆け抜ける。
バスケをする時間は作るもの
11月に開催された第9回全日本社会人バスケットボール選手権大会を制した日本無線は、2年振り4度目のオールジャパン出場を決めた。
「練習は週3回ですが、社業もあるのでなかなか全員が集まることは難しい。やっぱり年末は、仕事も忙しくなるので週3回も厳しい状況。みんな職場が違うので、忘年会などの行事もそれぞれ入ってくる季節ですから、12月は出来て週2回になると思います」
厳しい準備期間になることを打ち明けてくれたのは、日本無線の尾崎智則ヘッドコーチだ。
今年で社会人ボーラーとして5年目を迎えた#1福田 大祐選手。11月末に行われた関東実業団バスケットボール選手権大会では、優勝へ導く32点を挙げMVPを獲得。東山高校から法政大学へ進み、U-20日本代表としてアジアヤングメン大会に出場した経験の持ち主。大学4年時にはインカレ準優勝という好成績を収めている。
日本無線の一員として、過去に2度のオールジャパンに出場。3度目へ向けた準備期間となる12月の過ごし方を伺った。
「とにかくモチベーションと選手個々の持ち味を落とさないこと。これから向上させることは社会人として、年末のこの時期はなかなか難しい部分もあります。仕事も忙しいですが、うまく時間を作って練習をして、個々の能力だけを落とさないようにしたいです」
時間を作る。このやりくりができるかどうかは、バスケ選手ばかりではなく、社会人としても大切な要素。
「練習が終わってから仕事に戻ったりなど、時間を作る方法はあるのでいろいろと工夫はしています」
福田選手は限られた時間の中でもしっかりバスケができる時間を作っている。仕事とバスケを両立するこの環境についてはどう感じているのだろうか?
「もう最高ですよ。誰にでもできることではないですからね。体が動かなくなるまで、精一杯バスケットをやって行きたいし、とても良い環境でプレイできています」
昨今の大学生は、収入が不安定なNBLやbjリーグよりも、実業団を希望する選手は多いと聞く。先日、大学生がなりたい職業の1位が公務員だとテレビで見たが、安定志向であることがよく分かる。ゆえに実業団バスケの実力も少しずつだが上向いている実感も福田選手は感じていた。
「最近入ってくる選手は上手い選手も多く、とても刺激になっています。これは良い傾向だと思いますね。自分も負けてられないです」
強ければ強いチームと戦いたい!
もういくつ寝ると……正月よりオールジャパンが開幕する。
前回までは32チームだった男子の出場チームはNBLが12チームに拡大したことで4チーム増え、36チームで日本一を決める。NBDL代表となる上位4チームは全て、NBLチームでさえも4チームが1回戦、元日からの戦いを強いられている。
そんな中にありながら、社会人1位の日本無線は2回戦から出場。NBDL1位の東京エクセレンスと中国予選を突破したBEANSの勝者と対戦する。
過去2大会となる2011年と2012年は、2度とも同じ対戦カードとなり、1回戦で愛媛教員クラブを下し、続く2回戦は豊田通商ファイティングイーグルス(名古屋)に100点ゲームで敗れた。2度のオールジャパンで采配を振るった尾崎ヘッドコーチに、豊田通商戦を振り返っていただいた。
「外国人がいるのが大きな差ではありますが、日本人同士でもディフェンスの当たりなどはやっぱり全然違いますよね。そこで体力が消耗し、後半になって動けなくなったという試合展開でした。でもそこは『今からやれ』と言っても容易にできることではなく、そういうチームとずっと対戦しているからこそ身につくことでもあります。今、置かれている環境でどこまでできるかが大事ですので、その点を詰めて行きたいです」
普段戦っているリーグ戦の環境から違うチームが相まみえるのがオールジャパン。レベルの差は歴然だが、スカウティングが難しいこと、そして一発勝負のトーナメントということで、何が起こるか分からないのもまた楽しみである。
実際、2回目の豊田通商と対戦した2012年、前半は43-36と日本無線がリード。しかし、後半は27-61とダブルスコアで点差を引き離されて70-100で敗れている。しかし、その前半の戦いに自信を持ってオールジャパンへ臨む福田選手。
「1回目の豊田通商戦は前半から勝負にならなかった展開を反省し、2回目は幸い同じカードになってくれたのでどこまでできるか試したところ、前半は勝って折り返すことができました。前半を勝って折り返すことはもちろんですが、今回は後半も戦い続けられるような安定した試合運びをしたいです。NBDLチームだからって胸を借りるというつもりはなく、そこに勝ってNBLチームに胸を借りに行くという気持ちで戦って行きたい。うまく行くかどうか、結果はやってみないと分からないですしね」
この話を聞いた時、まだ組み合わせは決まっていなかった。最後に福田選手に戦いたい相手とは?
「強いところであればあるほどどこでも対戦したいですし、そこに渡り合えるだけの選手たちと今、バスケができていると思っています。強ければ強いチームと戦いたいです」
東日本大震災復興支援 第89回天皇杯・第80回皇后杯 全日本総合バスケットボール選手権大会
関東実業団バスケットボール連盟
泉 誠一