かくして期待していた通りにWリーグのルーキーオブザイヤーを獲得し、続くアジア杯では獅子奮迅の大活躍。これは本当に凄い選手をインタビューしていたんだな、白羽の矢は間違ってなかったな。と思うと同時に、一つの後悔が生まれてきます。それは「こんな凄い選手のインタビューを自分なんかがしてしまったこと」でした。自分ではなくバスケットボールスピリッツの誇るライターの方々がインタビューした藤岡さんの記事が読みたい、読まなければ! そう考え、ことあるごとに、その機会を伺っていたのですがなかなかタイミングが合わず、そのうちフリーペーパーは休刊になりWEBマガジンになり、ズルズルとここまできてしまっていたのでした。
自由契約選手のリリースを目にしたときには、もしかしたら引退するのかもしれないという予感が少しありました。他競技も含めて女性アスリートは27・28歳くらいで引退する選手は少なくない印象があり、加えて2019-20は新型ウイルスによるシーズン終了。ケガも続いていたし心が折れていてもおかしくない。そう感じていました。身体に痛みのないアスリートはいない、と聞くこともあります。引退することでその痛みが少しでも和らぐのであれば、その選択もやむを得ないだろうと。
そして残念ながら予想していた通りの引退リリースがあり、藤岡さんのインタビューを掲載するラストチャンスを逃すまいと、すぐにサンフラワーズさんにメールをいれ、ついに念願が叶うわけでありますが、それは期せずして現役最後のインタビューとなってしまいました。しかし、それがとても価値のある濃厚な記事となったのは、読んでいただいたみなさまにはおわかりかと思います。
「指導者になる」。これからは最初のインタビューでも答えてもらった、もう一つの目標に向かって突き進んでいくのでしょう。記事のリアクションにも「素晴らしい指導者になるのでは」というものがいくつもありました。男子選手に尻餅をつかせ、「ボールが消える」とまで言われた「クロスオーバー」。いつかキレッキレの「麻菜美コーチ直伝のクロスオーバー」を身につけた選手が出てくるのを楽しみにしています。
藤岡さんを取材したときの小さな手応え。今思えば、その手応えは取材に対するものだけでなく、何もわからないなかで毎日もがいてた自分が手にした「できるかもしれない」という微かな手応えでもあったように感じます。この手応えがあったからフリーペーパー創刊時を乗り越え、この手応えを頼りに今日まで続けてこれたのかもしれない。そう考えると藤岡さんは、まぎれもなくバスケットボールスピリッツの恩人でした。ここまでの現役生活、本当におつかれさまでした。そしてありがとうございました。
最後に、すでにチームを離れていたにも関わらず、藤岡さんに繋いでいただき、記事の掲載を快く許してくださいましたENEOSサンフラワーズ様に多大なる感謝を申し上げて、このまとまらない雑文をしめさせていただきます。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
JX-ENEOSサンフラワーズ #1 藤岡麻菜美
“NEO” comer For 2020
https://bbspirits.com/wleague/w170302/
元JX-ENEOSサンフラワーズ 藤岡麻菜美
信念を貫いて
part1「もう本当に続けてもダメかな……」
part2「過程にこそ結果以上の価値がある」
part3「新たな挑戦を次世代の子らとともに」
外伝 https://bbspirits.com/wleague/w20071701/
文 バスケットボールスピリッツ編集部
写真 三上太