まず最初にお断りしておきます。これは予告しておりました「外伝」ではありません。「外伝」はもっとちゃんとした「記事」になりますので、安心してください。これはそんなにちゃんとしてない「あとがき」というか雑文みたいなもの。そう考えて大目に見ていただきたいです。
筑波大学を出たばかり、まだルーキーだった藤岡麻菜美さんを取材したのは女子代表がベスト8になったリオオリンピックの直後でした。代表選手がチームに合流して練習を再開、というタイミングだったと思います。
「まずは自己紹介を兼ねて得意なプレーを教えてください」
そんな質問から取材を始めたと記憶していて、それに対する答えが次のコメント。
「クロスオーバーからカットインでドライブしてキックアウト」
まったくなんのことかわかりませんでした。が、それもそのはず。当時の私はバスケットのことはほとんどわからない、まったくの素人だったからです(今もあまり変わらないかもしれません)。
Bリーグ開幕に合わせて雑誌をフリーマガジンにする。そのために準備をしていましたが、当事者は「スポーツ全般を見ることが好き」というくらいの経歴で、バスケットについてもbjリーグをたまに見ていたので選手の名前とポジションがざっくりとわかる。その程度のものでした。ついでに言うとライターですらありません。当然ですが選手の取材も苦戦しました。とにかく初めてのことだらけで、なんとか1冊目をカタチにしようともがいている。そんな毎日だったのを覚えています。
フリーマガジンにリオで旋風を巻き起こした女子選手のインタビューは必須、でもリオの代表選手は忙しいだろうし、つかまらないよね。じゃあ次の東京で主力になってそうな若手選手をインタビューしよう。そこで白羽の矢を立てたのが当時大学生ながらたびたび代表にも選ばれていた藤岡さんだったのです。
取材は思いのほか順調に進みました。
冒頭の「得意なプレー」がまったく理解できなかったわりには短時間で聞きたいことも聞けて、核になるエピソードも入手できて、それまで苦戦続きだった取材とはうってかわって小さな手応えを感じていました。「今回はうまくいったね」「新人の選手だからやりやすかった?」「かもね」などと柏から新潟に帰る車中で話した記憶がありますが、先日公開されたインタビューを読めばわかる通り、これは藤岡さんのもともとの頭のよさ、話のうまさによるところが大きく、たいへん失礼な感想だったと思います。