ブレックスの歴史を刻むベテランたちの努力
山田選手のプレーオフは、JBLスーパーリーグで2連覇を果たしたトヨタでの2006-2007シーズンまで遡らねばならない。実に7年ぶりの真剣勝負を終え、「良い緊張感を持ちながら楽しもうと思っていました。でも、やっぱり負けると悔しいですね」。来月には33歳を迎えるベテランにとって、プレーオフを経験したことは大きな刺激にもなっていた。
「まだまだ自分でもできると信じていますし、来シーズンも必ずこの舞台に帰って来たい。今度はしっかり結果を出せるようにまたがんばります」
今シーズン、50試合に出場した網野選手だが平均出場時間は15.5分。20分出場した翌日にプレイタイムが激減することもあった。ルーキーの熊谷尚也選手ら若手の活躍、さらに来シーズンは帰化申請すれば日本人選手として扱われるルール変更により、日本人の母を持つトミー・ブレントン選手らとのチーム内でのポジション争いはさらに激しくなりそうだ。
「選手としてコートに立っている間は負けたく無い気持ちがあります。試合に出て、結果を出すことが評価される世界。負けずに切磋琢磨しながらも、若手が育ってくれることはチームとしては大事なこと。そこはうまく気持ちを整理しながら、バランスを取ってできていると思っています」
34歳を迎える網野選手と田臥選手、2つ上にはキャプテン竹田謙選手がいる。ベテラン勢が率先して努力して来たことがリンク栃木の礎となり、2007年発足の若いチームの歴史を刻む。
「練習中から自分なりにはハードにやってきたつもりですし、プレイタイムがあってもなくても変わらずにやるべきことはやって来ました。竹さんも常にそういう姿を若手に見せています。第2戦で遠藤(祐亮)がチャンスをもらった時に、しっかり結果につなげることができた活躍を見ていると、少しは若手にも伝わっているのかな」
まだまだ現役!
認めたくは無いが、選手としてコートに立てる時間には限りがある。しかし、負ければ終わるプレーオフの緊張感や真剣勝負の楽しさを久しぶりに味わったことで、来シーズンへ向けての新たな原動力にもなったはずだ。海の向こうで熱戦が繰り広げられているNBAを見れば、30代の選手たちが当たり前のように活躍している。3連覇を目指すマイアミ・ヒートの先発メンバーには、32歳のドウェイン・ウエイド選手や35歳のシェーン・バティエ選手が名を連ねていた。日本で活躍する30代の選手たちだって、まだまだ伸び白は十分にある。
今シーズン、プレイタイムが減った網野選手に「引退」の二文字が脳裏に浮かんでしまってはいないか……そんな心配が頭を過ぎり、今回話を伺ったのが本当のところ。
「とくにプレイタイムが無いからといって心配してもらうようなことはないですよ。ヒラメキの多いコーチなので!」と笑い飛ばしてくれたことで、胸をなで下ろす。キャリアの最後についても話してくれたが、それはまだまだ先の話。
まずはしっかり体を休め、そして来シーズンの巻き返しへ向けて充実したオフシーズンを過ごしてもらいたい。半年後、今シーズン以上にコートの中でハッスルできるように──
NBLプレーオフは今週末、首位チームが登場するカンファレンスセミファイナルが行われる。
イースタンカンファレンスファイナル
東芝神奈川(1位)vs トヨタ東京(2位)
第1戦:5月10日(土)15:00@代々木第二体育館
第2戦:5月11日(日)15:00@代々木第二体育館
第3戦:5月13日(火)19:00@代々木第二体育館
ウェスタンカンファレンスファイナル
和歌山(1位)vs アイシン三河(2位)
第1戦:5月10日(土)15:00@愛知県体育館
第2戦:5月11日(日)15:00@愛知県体育館
第3戦:5月13日(火)19:00@パークアリーナ小牧
NBL
リンク栃木ブレックス
文・泉誠一
写真・三上太