「どんどんプッシュしていくバスケットを求めています。ガード陣は速いし、ウイングの広瀬(健太)も、(小林)大祐もガンガン行くタイプ。でも、そこのバランスを保つことは必要になるとは思います。彼らの良さを生かすためにも、誰かのためにプレイする献身的な意識や、周りを生かすための自己犠牲など、そこまで考えてプレイできるようになれば、もっと機能してくると思っています」
これまではディフェンシブなチームであり、5〜60点のゲームを僅差で勝つのがサンロッカーズのスタイルであったが、指揮官が替わりガラリと印象が変わった。その戸惑いもさることながら、初めて外国人ヘッドコーチの元でプレイすることに違和感や難しさは無いのだろうか?
「そこには思ってた以上の難しさがあります。言葉の問題も大きいですし、特徴や性格をつかむのもそうですし、どうしても日本人とは違う感覚があります。外国人選手が2人とも変わったことも大きく、日本でプレイしたことある選手であれば文化を知っていてくれるので理解も早いですが、そこが難しいところ。伝え方も簡単にはいかないと思っています」
新体制となったチームキャプテンにとって、悩みは多い。
今いるメンバーで勝つことだけ!そのためにも学ぶことが大事
ルイスHCを迎えて3ヶ月が過ぎ去ろうとしている今、ようやくいろいろと分かり始めて来た時期でもある。
「僕は時間が経つにつれて、ティムとのコミュニケーションが取れるにようになって来ていると感じていますし、今後はもっと自発的にやらないといけないという自覚もあります。その点については問題ないですが、ただチームが勝っていないので、選手のモチベーションや試合への臨み方は考える必要があります。勝てていないことで、責任の所在を明確にしようとしがちになりますので、それはチーム全員の責任であることをスタッフはもちろんでしょうが、選手にも意識させるようにしていかなければいけないと感じています」
7シーズン目を迎え、しっかり経験を積んできた酒井はルーキーシーズンを引き合いに出して、さらに話を続けた。
「今までなんだかんだ言って、こういうシーズン開幕も多かったです。僕がルーキーシーズンの時なんて、負け越しスタート(第4週までで今シーズンと同じく1勝7敗)でしたが、途中から盛り返して最終節までプレイオフ争いをしていました。なので、まだまだ全然悲観する時期ではない。これから自分たちでどれだけ立て直して、上位に食い込んで行けるかですよね」
サンロッカーズの大黒柱である#15竹内譲次が戻って来れば巻き返せるのでは?端から見ればそんな期待感も強いが、その意見を酒井は一蹴する。
「譲次が間に合わないことは始めから分かっていたことであり、それを考えていては選手としてダメです。ファンの方々はそう思われているかもしれませんが、選手の間ではそういう思いは全くなく、今いるメンバーで勝つことしか考えていません。選手一人ひとり、ハマ(#14中濱達也)やミツ(#0満原優樹)にも意地がありますし、彼らの特徴は出始めています」
この試合、竹内だけでなく#21ダリアス・ライスもケガで欠き、インサイドでビハインドを背負っていた。しかし、満原はシュートレンジ広いオフェンス力で二桁得点を挙げ、中濱はガッツ溢れるルーズボールやリバウンドに絡み、役割を果たす。
選手それぞれが仕事を全うすることでチームはまとまっていく。その成長できる段階がレギュラーシーズンでもある。今シーズンは一気に54試合へ増え、まだまだ一歩を踏み出したばかり。
今はルイスHCと選手たちがお互いに腹を探り合っている状況だ。
「私が来て、チームは違うスタイルにガラッと変わりました。8年間、小野HCの下でバスケットをしてきたわけで、私のスタイルにアジャストするにはもう少し時間がかかると思っています。私は選手たちにフリーを与えるバスケットを求めていますし、選手たちがゲームをコントロールできるスタイルを目指しています。選手たちには、ロボットのようにプレイして欲しくはないですし、一人のバスケットボール選手として戦ってもらいたい。まだまだお互いに学んでいる状況であり、時間がかかるかもしれませんが、信じてがんばることが大事です」
学ぶことを惜しまなければ自ずとチームは良くなって行く。そう思わせてくれた価値ある敗戦だったと言えよう。
次戦は10月26日-27日、墨田区総合体育館でのアルバルクはホームゲーム。集客面でも平均1,210名と大幅に目標入場者数2,000名を下回っているが、サンロッカーズファンは少なくはないはずだ。チームもファンもポテンシャル高いサンロッカーズの巻き返しに期待したい。
文・泉誠一