大学バスケを引退していない(※他連盟に選手登録している)特別指定選手は、アマチュア契約となる。Bリーグの規定にあるアマチュア選手の定義は、『報酬または利益を目的とすることなくプレーする者をいい、交通費、宿泊費、備品手当、食事手当、保険料、その他クラブが必要と認めた手当以外を受理してはならない』と記されている。横浜は自宅から通えたが、三河と富山での生活環境に興味が沸いた。
「三河はアイシンの寮に住んでました。寮ですが、メチャクチャ良いホテルみたいです」と企業が持つ充実した施設で不自由のない生活を送ることができた。富山も同じく寮生活だった。「bjリーグ時代に使用していた20部屋くらいある広い寮ですが、小原(翼)さんと葛原(大智)さんと僕だけ。富山はさすがにムッチャ寒かったです(笑)」と環境面では差がある。しかし、特別指定選手としていろんな体験ができることをメリットとして挙げた。
「もちろん環境が良いチームの方が良いですが、いろんな環境を経験しておくことでそのありがたみを感じることができます。良い環境に甘んじているだけではいけないことは、すごく勉強になりました。その両方を経験できるのも特別指定選手ならではですし、いろんなことを知る機会です」
用意された住環境こそ違いはあったが「食事には困らないし、トレーニングもしっかりできました」とバスケをする環境としてはいずれも遜色が無い。 法政大学バスケ部に属し、学生の本分である学業があり、日本代表活動にも参加し、そして横浜でプロとして活躍するための準備に勤しむ。休む間もない忙しい日々を両立させるためには「そつなくこなすしかない」。
「まず、バスケを優先したいという自分の意志を固めました。でも、卒業はしたいので、その単位を取るためにどれだけ労力を使いながら、うまくコミュニケーションを取っていくかが大切です。それは人間としても、ポイントガードとしても大事なことであり、うまくやるしかないです」
Bリーグがオフとなる前期に集中して授業に出られるようスケジュールを組む。シーズン中は、練習がない月曜日や練習時間に重ならない1限と5限に詰め込んだ。「きついけど、それをやらなければ上は目指せない。自分がやりたいことに対していかに支障が出ないかをずっと考えていました」と頭を使い、周りのサポートを受けながらそつなくこなしていった。ちなみに中村は法学部である。
「僕は法学部ですが、スポーツで入学してきた生徒はSSI(スポーツ・サイエンス・インスティテュート/スポーツ能力向上とキャリア形成を両立)という制度があり、卒業単位のうち半分くらいはスポーツの授業を取ることができます。スポーツ医学や栄養学など興味がある授業も取れるので、学校は苦にならないです」
八村塁やテーブス海などアメリカの大学に進めば、規定ラインの成績をクリアしなければバスケができない。NCAAがそうであるように、「学生なのだから勉強はやって当たり前」と中村も正論を説いた。
part3へ続く
【特別指定選手のススメ、パイオニアとして】
文・写真 バスケットボールスピリッツ編集部