bjファイナルが9シーズン目にして1万人(10,026人)を越えた。
これまでの客層は初めてバスケを観る方が多かった印象を受ける。しかし今回は、シーズンを通してチームをサポートしてきたブースターが詰めかけ、ゴールドとピンクのチームカラーが有明コロシアムの大半を染めていた。
選手が入場するたびに大きな掛け声で迎え入れるピンク側は、秋田ノーザンハピネッツ。
高らかな指笛とゴールドor白をまとって舞っているのは、琉球ゴールデンキングス。
観客席を埋めたのはブースターだけではない。すでにオフシーズンを迎えた同じbjリーグの選手たちが、全国各地から集まって来ていた。NBLやWJBLの選手たちも多くおり、お祭りのような空間はリーグを越えて盛り上がりを見せる。
どちらのファンでは無い方でも、ついつい近くのピンクorゴールドに寄り添うように荷担してしまう。
何も欲しくないのに、ついつい物販エリアでサイフのヒモが緩んでしまう。
1杯だけ、と決めていたのにシンハービールをついついおかわりしてしまう。
これら全ては満員の相乗効果。人が多く集まることで気持ちが高ぶり、ついつい釣られて意図していない行動をしてしまうのだ。
それは、選手たちも同じであろう。
大舞台で30点を挙げた2人のルーキー。
アーリーエントリーで昨シーズンから出場しているが、秋田#0富樫勇樹選手と新人王を獲得した琉球#14岸本隆一選手はともにルーキーシーズン。
アメリカ帰りの富樫選手は鳴り物入りで秋田のスター選手となり、今シーズンは“富樫のチーム”と中村和雄ヘッドコーチは常に言って来た。
マッチアップするのは学生時代から“キングス入り”を夢見てきた岸本選手。夢を叶え、2年目で辿り着いた有明の舞台。
スピードと緩急を付けたステップで抜き去りゴールを決める富樫選手は30点。
ライン遠目からでも強気に放つ3Pシュートを次々と決めた岸本選手は34点。
触発されるように琉球#3並里 成選手も今シーズン最多となる14点をマーク。
若い日本人選手たちの躍動感、外国人選手たちのパワフルなプレイに1万人が酔いしれた。
多くの人に観られることで、選手は成長する。bjリーグならではの強化がここにあり、限られたチームだけが味わえる“特効薬”と言えよう。
2年ぶり3度目のチャンピオンに輝いた琉球ゴールデンキングス。
小菅直人選手(新潟県)を除く全ての日本人選手は沖縄県出身。地元のスターが集まるホームチームは毎試合多くの方に支えられることで、自ずとプロとしての自覚が芽生える。
強いチームになるためには、レギュラーシーズンを通してどれだけ本気の試合ができるかどうか?
琉球は毎試合3千人以上の応援とともに、評価されることでその責任は重い。実際、“キングスは大丈夫か?”という声が岸本選手の耳にも入っていたそうだ。そのプレッシャーをはね除けてきた琉球が頂点に立ち、MVPを獲得したルーキーは“どうだ!”と見返した。
秋田もリーグ2位となる平均2669人の集客数を誇り、ブースターに強くしてもらったチーム同士の対戦は見応え十分。
一発勝負のファイナルは運もある。しかし、勝っても負けても日本人が育つ環境であることを、ファイナルの大舞台でルーキーたちがしっかりと数字で示してくれた。
この盛り上がりを体験してしまうと、次はNBLを制した東芝ブレイブサンダース神奈川との日本一決定戦が実現できる環境整備が急がれる。
どっちが本当に強いのか?
ルールや外国人の数の違いは言い訳でしかない。マイケル・パーカー選手を欠いたNBLファイナル第2戦、和歌山トライアンズは最後にブザービーターで敗れたが、互角の戦いを見せたではないか。
このbjファイナルでも、ボールが周り、5人がしっかり動いていた外国人選手が一人少ないオンザコート2の時間帯の方が観ていて楽しい。
bjリーグの日本人選手たちもしっかり成長している。もちろんNBLの日本人選手も素晴らしい。どちらのリーグも自信を持って日本一決定戦の舞台へ歩み寄ってもらいたい。
そして日本人であれば誰もが、日本代表を目指して欲しいものだ。
新人王&プレーオフMVPを獲得した岸本選手は、24歳を迎えたばかり。東京オリンピックのターゲットエイジ。メンタルの強さからも日本代表向きであろう。
このファイナルで戦った両チームが、なんと今年9月13日(土)に再び大田区総合体育館にやって来る。東京での琉球ホームゲームが実現するのだ。ちょうど先週、次号へ向けて青木康平選手(ライジング福岡)に夢を伺うインタビューを行っていたのだが、沖縄の話題も出ていたので少しご紹介しよう。
「本当にすごいと感じるのは、沖縄はどの体育館でやっても沖縄のホームになるんです。(飛躍して言えば県外でも同じになるということ?)沖縄になるんですよ、絶対!すごいですよー」
これは楽しみだ!
bjリーグ
琉球ゴールデンキングス ホームゲーム in 東京
泉 誠一