選手としてプレーすること以外の活動も重視している宮田にとって、この鎌倉でのクリニックは半ばライフワークにもなりつつある。クリニックはコーチ役の選手にとっても成長の場であり、宮田はその機会を提供してくれることに感謝の意が絶えない。
「こういう所に選手を連れてきてくれてありがたいと言ってもらえるんですが、逆も然りなんですよ。バスケットというのは一つの特技でしかなくて、選手もコートを出たら普通のおじさん。でも、それを求めてくれる人がいるから仕事になるわけで、例えば人前で喋るのが苦手な選手も、ここで毎年喋ることで他の場でも喋れるようになったり、自分が応援してもらえることの意味がわかってくるようになる。僕はクラブでは運営のほうを見る立場でもあるので、このクリニックの運営がどれだけ大変かも理解してるし、選手のほうが代わりはいくらでもいる。バスケットの楽しさを伝える場を作ってもらえることは、選手にとって本当に貴重なんです。感謝すべき側は選手のほうだと思ってます。選手は、こういう場に呼んでもらえるような選手を目指してほしいし、クリニックに参加した子どもたちが自分の試合を見に来てくれるという相乗効果があることも理解しないといけない。ここは自分のライフスタイルの一部になってるので、スタッフさんには足を向けて寝られないです」
このクリニックがライフワークになっているという意味合いは、主催者側のほうこそ強い。宮田を筆頭に継続的に参加しているメンバーと手を取り合って作り上げてきた自負もあり、それを後世に引き継いでいくことが使命だと上林は考えている。
「言い方は良くないですが、ただ選手を呼んで1dayクリニックをやるだけならいくらでもできると思うんです。だけど、地域の子どもたちにどんなことを伝えないといけないのか、どういう練習をしてほしいのかを考えると、宮田さんや柴田コーチとはそういうコミュニケーションが取れるので、だからこそこのクリニックは良いことができてるのかなと思うんですよ。子どもたちにとっては短い1日だけど、その1日が良い1日になるようにと思ってやってきたことですし、ここまで積み上げてきたものもある。子どもたちは終わりがなくて、どんどん新しい子がバスケットに入ってきてくれるので、長く続けていくことが一番子どもたちのためになると思って頑張っていきたいですね」
“第二の西山” と呼ぶべき選手が生まれ、このクリニックが湘南エリアのバスケットの土台として認知される日が、いつかきっと訪れるものと期待したい。
文・写真 吉川哲彦