冨岡がチームの勝利を自身の成長の物差しにしているのは、ポイントガードというポジションの特性によるものであり、これまでの経験からくるものでもある。何より、チームスポーツである以上はチームの結果が第一というのが冨岡の考えだ。
「個人で20点取ってもチームが負けたら、その人が上手いかというとそうじゃないと思うんですよ。もちろんその選手の良いところは評価されるところもあると思うんですが、5対5のバスケの中ではチームを勝たせるポイントガードが上手いポイントガードだと自分は思ってるので、もっと支配力をつけないといけないと思いますし、頼られる存在になりたいというのが目標です。今はまだまだ足りないことだらけで、何も満足してないです」
チームを勝利に導く司令塔を目指すとなれば、五十嵐圭の存在が冨岡に与える影響も大きくなる。これほどの実績の持ち主とスターターで並び立つ今は、言うまでもなく冨岡にとって非常に貴重な時間だ。
「それこそ、僕が小学生のときに広島のグリーンアリーナで世界選手権があって、それを見に行った記憶もありますし、新潟で地区優勝したシーズンもすごく見てました。自分とはかけ離れたキャリアを送ってきた、日本を代表するポイントガードと同じチームでプレーできるというのはすごく恵まれたことだと思いますし、今シーズンも目に見えて結果を残してるので、学ぶところは本当にたくさんあります。圭さん以外にもベテランの選手が何人もいて、長い間第一線で活躍し続けた選手はやっぱり随所に違うなと感じます。どのチームにいてもそうだと思いますが、吸収できるものは全部吸収するというのが、僕が行動を起こすときの判断基準。本当に良い経験をさせてもらってます」
しながわシティとのGAME1で早々にベンチに下がった冨岡だが、第4クォーター残り2分51秒で再びコートに立ち、その時点で11点あったビハインドを5点まで縮めることができた。遡ると、五十嵐もシーズン開幕戦で指を負傷しながら、その後も休むどころか全試合スターターを務めている。「圭さんは利き手をケガしたのに試合にずっと出てるし、シュートもめちゃめちゃ決めてる」と、冨岡はやはりその背中を見ているのだ。翌日のGAME2、冨岡はスターターとして23分15秒出場し、28点差の圧勝に貢献した。2年続けて味わった無念を晴らすという決意も冨岡を突き動かす原動力となり、プレーオフ進出に向けてギアを上げたい新潟にとって、さらに欠かせない存在となっていく。
「2年続けて降格してしまって、それでもこのチームに残らせてもらえた。今シーズン来た選手も覚悟を持って来たと思うんですが、それ以上の覚悟を持ってプレーしないといけないですし、そこを頑張りきれるかどうかが自分のキャリアにとってもすごく意味のあることだと思います。頑張る量は今までと変わらないし、常に自分のベストを尽くそうと思ってやってますが、自分がやらないといけないという気持ちはより強く持ち続けようと思ってます」
文・写真 吉川哲彦