勝率を8割に乗せた戦いぶりを「ここまでは想定してなかった」と語る今林だが、東京Uにはタイムシェアという武器もあり、それゆえにディフェンスの強度を維持できているという側面もある。プレーオフを見据えた手応えを持ちつつ、慢心は感じられない。
「HCも『できすぎな部分はあるけど、それはみんなの意識の高さで成り立ってるものだから』とおっしゃってたので、後半戦も継続していこうと思います。他のチームは疲れてくるところもあると思いますが、僕らはタイムシェアしてるので、ここから上げていける。徐々にプレーオフを意識してくるタイミングではあるんですが、試合はまだ結構ありますし、終わりが見えてくるかどうかという今が選手としてしんどい期間でもあるので、それをしっかり乗り越えて、一番大事なプレーオフにつなげられたらと思います」
「最初にプロになりたいと思ったのは中学2年か3年のとき。僕にはそれしか夢がなかった」という今林のキャリアのスタートは、佐賀バルーナーズの特別指定選手。その後、豊田合成スコーピオンズで1年プレーし、昨シーズン東京Uに移籍してきた。佐賀では「その日の練習を乗り越えるのがやっと」という日々を過ごし、企業チームである豊田合成では「普通のプロとしての生活ではない、イレギュラーな状況も多々あった」ということだが、それぞれに学びがあり、充実感も得た。それを経てたどり着いた東京Uについては「環境的にも良いですし、B3でこういうアリーナでプレーできるのはなかなか経験できない。選手として良い期間を送れている最中だなと感じます」とのことだ。
結果も伴っているだけに、B2昇格に関しても「そのためにはホームでプレーオフを迎えることが大事」と、より現実感を持って視界に入れている。チームとしては、オフェンス面でも今林の働きがより重要になってくる局面。昨シーズンに続いて1試合平均2ケタをマークしているものの、「アベレージで2ケタ取る日本人は貴重ですが、彼の場合『2ケタ取ったからOK』ではない」と編成責任者である宮田諭の要求は高い。「5、6人が2ケタ取る中で、リーディングスコアラーは日本人になってほしいというのがあって、それを一番期待してるのが川島と今林。それだけのポテンシャルがあるし、周りから信頼される立場になってきている」(宮田)からだ。今林自身も、自覚は強い。
「個人的には、シーズンが始まる前に『平均15点取りたい』と言って、現状はなかなか難しいんですが、得点の部分は自分の強みだと思ってるので、弱気になることなく突き詰めていきたい。やると決めた以上は、やり続けていきたいです」
そんな今林について、宮田は「全然リーダーシップを発揮しないのに、いつもチームの中心にいてコミュニケーションを生んでくれる。欲がないようで情熱はすごくあるし、向上心を持っていろんな人に感謝してバスケしてる姿勢で、周りも彼を応援したくなるのかなって。ファンの皆さんもきっと、彼を応援してて楽しいと感じるものがあるんだと思うんですよね」とも評し、影響力の強さを力説する。今林がオフェンスで先頭に立ち始めたら、はたしてどれほど活躍し、どれほどチームを勢いづけ、どれほど周囲を興奮させるのだろうか。シーズン終盤は、今林がチームを背負って攻め続ける姿を見てみたいものだ。
文 吉川哲彦
写真 鈴木真人